Path: trc.rwcp!rwc-tyo!news.iij.ad.jp!inetnews.niftyserve.or.jp!niftyserve!VFE17145 From: 西本 やす子 Newsgroups: tnn.forum.weekly-post Subject: Re: 電子メディアに対する考え方 Message-ID: Date: 26 Mar 1995 22:20:00 +0900 References: Lines: 70 MIME-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp  電子民主主義の話題について盛り上がっているようですので一言。  都知事選の論点で言うと「防災対策」ということになるのでしょうか。  私の兄は、兵庫県庁に勤務しています。  兄から聞いた話を題材にして、行政の対応という点から、話したいと思います。  今回の震災では、行政の縦割りピラミッド型組織の限界が露呈したと思います。  これは、一つの例ですが、  兵庫県庁では、神戸市、芦屋市、西宮市の避難所を対象に、避難所緊急パトロ ール隊というのをつくりました。これは、警察官(2、3名)と県庁の職員(2 名)の計5名を1班とし、計100班の隊をつくり、毎日毎日、(他府県からの 応援の)パトカーに乗って避難所をパトロールし、避難所の要望を聞きに回ると いうものです。  これは、地震が起こった直後に避難所と役所の連絡が悪く、物資がスムーズに 行き渡らなかったときに、必要だった組織でした。しかし、各避難所に物資が行 き渡り、行き渡っていなくてもどういう要望にはどこに連絡すべきかという情報 は行き渡り、その連絡ツールである電話回線も、完全に回復すれば、毎日毎日、 (物資を届けにいくわけでもない単なるパトロール隊が)避難所を巡回する必要 はなくなっているようです。しかし、地震から2カ月以上もたった今でも、毎日、 100台のパトカーと約300人の警官と約200人の県災害対策本部員が、被 災地をうろちょろパトロールしています。これは、もう、ほとんど役に立つ仕事 はしていないという状況のようです。いまや、緊急パトロール隊は、避難所を訪 れても、「こんなパトロールをしている暇があったら、もっとほかにすべきこと があるんじゃないですか?」と、避難所の世話役に嫌みまで言われているみたい です。完全に、時代遅れの組織になってますね。  緊急パトロール隊は早く廃止すべし、これは、(一県民の私も含めて)ほとん どの事情を知るものが思っていることです。それ以外にもっとすべきことは山積 みなのです。  例えば、大阪からホームレスの人たちが続々と避難所の無料物資を求めてやっ てきたり、避難所から出ていく人もいたり、で人の動きが激しく、治安が悪化し ていまして、そちらのほうに警官の人手は少しでも欲しいですし。  県災害対策本部員も、県庁の各部署からの寄せ集めでして、復興のための本来 の仕事も多忙の折りなのに、それを置いたままパトロール隊に参加しているそう です。時代遅れになった組織であるパトロール隊のために、仮設住宅建設など、 復興関係の必要性が高い業務からも人手がとられ、弊害が出ていると聞きます。    これは、ピラミッド型の行政組織の限界ですね。  災害などの緊急時には、刻々と変わる状況を的確に判断し、臨機応変に組織を 創り、また、組織を解散していかなければならないのですが、しかし、一度、動 き始めた組織は、関係者は誰も無駄である、その役割は、この段階では終わって いる、と思いつつ、誰も解散を命令する者がいないまま、毎日、動いているよう です。    ピラミッド型の組織は、底辺の現場から、頂点のトップまでに、いくつもいく つものクッションがありまして、底辺の現場からトップまでに情報が届くまでに 非常に時間がかかります。それでも届けばまだましなのですが、途中の一カ所で 止まればもう、トップに情報が届かなくなってしまいます。  緊急パトロール隊についても、現場では、早く解散すべし、という声が、震災 後10日後あたりから既に出ていたらしいのですが、まったく、トップに届いて おらず、今に至っているそうです。まったく、臨機応変には対応できません。  それでも、ピラミッド型の組織が用いられている理由の一つは、現場の山のよ うな情報や要望やニーズを、何度も中間のクッションをとおすことによって、集 約し、まとめあげるという機能があるからでしょうね。  しかし、パソコン通信をされておられる方は、実感されておられると思います が、今や、オンライン・ネットワークのコミュニケーションでも、こういう意見 の集約ということは十分に可能なのですね。ある意見が出されると、それに賛成 する意見、反対する意見が次々に出され、ばらばらだった意見が徐々に集約され 一つの方向にまとまってきます。その過程は皆の前で展開されて非常にオープン です。さらに、「立場」ではなく「意見の説得力」が力を持ちますから、中間管 理層が無知なために貴重な情報が握りつぶされてしまう、というようなことはあ りません。    これからの行政は、「住民の多用な意見をできるだけ吸い上げ、正確に反映 し」かつ「それを集約して果敢に実行していく」という、一見、相反するような ことが求められているように思います。  それを可能とするのが、電脳ネットワークだと思います。           西本やす子(女) 無職 29才 兵庫県