東日本大震災における被災者の秩序だった行動は世界に感銘をあたえた. しかし,この本は災害時にはおおくの場所で,たがいにたすけあい,自分がもつものすべてを他人にあたえ,金銭が機能しなくなるユートピアのような状態が生じると主張している. 例としてとりあげられているのはハリケーン・カトリーナやサンフランシスコ地震や 9.11 などだ.
それとともに,被災者への不信感をもつマスコミやエリートたちがそういう世界を破壊する行為をすることを主張している. 軍隊や警察が窃盗をはたらいていないひとを射殺したり,こわれていない家を破壊したり,避難やボランティアをさまたげたりするという. アメリカで被害にあうのはおもにアフリカ系アメリカ人であり,ふだんはおさえられている偏見や差別が顕著なかたちであらわれる.
日本と海外の市民にちがいがあるからではなくて,日本ではそういう対立関係がないことが,略奪や殺人のデマの発生をおさえ,カトリーナやサンフランシスコ地震などとのちがいにつながっているのではないだろうか. 400 ページをこえるこの本は,そういったことをじっくりかんがえる時間をあたえてくれる.
評価: ★★★★☆
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