この報告では,自己組織系がみたすべき必要条件のいくつかをしめし,それをみたせる計 算モデル CCM を提案し分析した.また,CCM によって N クウィーン問題などのプログ ラムを記述して実行し,つぎのようなことをしめした.
CCM を発展させれば,モデルのなかに人間のもつ不完全性や非合理性までをもとりこみ つつ,数理解析が可能なシステムをつくれるのではないかとおもわれる.また,分割統治 法がうまくはたらかない全体性や開放性をもつ問題があつかえるようになると期待するこ とができる.まだ自己組織化の本質に十分に接近できたとはいえないが,この研究はコン ピュータによる自己組織系の実現のための一歩となるとかんがえられる.
今後の課題のなかから,重要な 2 点をあげる.第 1 に,N クウィーン問題や巡回セールスマン問題のプログラムは基本的に閉鎖系であり, 自己組織性が本来のちからを発揮する問題ではないとかんがえられる. 今後,より適切な問題に CCM を適用し,その結果をモデルに 反映させていくことが必要であろう.
第 2 に,現在の CCM においては秩序度関数すなわち計算の目標や目的を絶対のものとし ている.しかし,本来,自己組織化の過程では,計算によってえられたあらたな知識にも とづいて目標や目的が修正されるばあいがおおいであろう.そこで,モデルを拡張してそ れに対処する必要があるとかんがえられる.これに関連して,CCM への自己参照 (リフレ クション) の導入方法をかんがえる必要があろう.
[*1] 手順の断片である規則だけを記述することによって.