ALife IV (4th Int. Workshop on the Synthesis and
Simulation of Living Systems) 報告
報告者 :
RWCP ニューラルシステム研究室
金田 泰
Written as plain text: 94-7-?.
Rewritten by HTML: 95-10-31, Updated: 95-10-31.
参照 :
[RWCP ホームページ],
[金田のホーム・ページ]
[親ページ].
梗概
1994 年 7 月 6 日 〜 8 日に ALife IV において発表するために
MIT
(Cambridge, Massachusetts, USA) に出張した.この学会は人工生命に
関する最初に設立された学会であり,今回が第 4 回である
(次回は
1996 年に奈良においてひらかれる予定).参加者は数
100 人で,おそらくこれまででもっとも大規模だったとかんがえられ
るが,内容はこれまでの 3 回にくらべると低調だという印象をうけた.
すなわち,従来の手法の改良に関する発表がおおく,非常にあたらし
い内容をふくんだ発表はみられなかった.また,今回は芸術をめざし
た発表はきかれなかったが,いくつかの印象的な動画 (Sims のなど)
が印象にのこった.
1. ALife IV の概要
Invited Talk, 1 件 (7/6 19:30-21:00)
Tarter, J., and Horowitz, P.: Search for Extra-Terrestrial Life.
部分的に聴講した.
Plenary Talks, 4 件 (7/6-8)
4 件すべてを聴講した.
- C. Langton:
Artificial Life: The State of the Art. (7/6)
- K. Shimohara: Evolutionary Systems for Brain Communications. (7/6)
- J. Szostak:
Towards the In Vitro Evolution of an RNA Replicase. (7/7)
- L. Steels:
Emergent Functionality of Robot Behavior through On-line
Evolution. (7/8)
General Interest Talks, 2 件 (7/7)
2 件すべてを聴講した.
- T. Ray:
A Proposal to Create a Network-Wide iodiversity Researve
for Digital Organisms.
- S. Helmreich: Travels through `Tierra,' Excursions in `Echo':
Anthropological Reflections and Refractions on the Looking-Glass
Worlds of Artificial Life.
一般セッション (7/6-8)
Session 1 は逐次だが,Session 2 以降 (2 〜 6) は 2 つの並列セッショ
ンによっておこなわれた.これらの一般セッションにはタイトルは
ないが,並列セッションのばあいには一方は long papers,他法は
short papers のセッションとなっている.Long papers は全部で 25 件,
short papers は全部で 28 件である.後者は 100 人程度しかはいれな
い小ホールでおこなわれたため,聴衆が席からあふれていることが
おおかった.
ポスターセッション (7/7 14:30-16:15)
ポスターはとりけされたものもふくめて 55 件である.報告者はこ
こで発表をおこなった.
その他
7/6 の 21:00 から MIT Press
主催の reception がひらかれたが,報告者
は出席しなかった.また,7/7 には Crambake と称する野外パーティ
がもよおされた.これはその名のとおり貝などを焼いてたべるもの
だが,貝よりもロブスターが主であり,1 人 2 個以上もっていかな
いように厳重に管理されていた.
2. 注目すべき発表
以下,いくつかの発表について報告する.
C. Langton:
Artificial Life: The State of the Art [Plenary talk]
ALife の現状と今後に関する survey である.ここでは今後の部分に
ついて報告する.Langton はつくば人工生命祭のときも real world
との相互作用の重要性についてかたっていたが,ここでもおなじ
OHP シートをつかってそれを論じていた.われわれにとっての
real world は自然物だけではなくて人工物をふくむ (Langton は明確
にいっていないが,おそらく非物理的世界をふくむ) 世界だという
点は報告者も共感する.
D. Terzopoulos, et al.: Artificial Fishes with Autonomous
Locomotion, Perception, Behavior, and Learning in a Simulated
Physical World [Long paper]
この発表は AI などのさまざまな技術を駆使してつくられた人工魚
についてのものである.つかわれた物理モデル,学習モデル,行
動モデルなどについての概略とビデオによる動画とがしめされた.
さまざまなモデルがうまくくみあわされ,そこから自然な個体と
して,および集団としての魚のふるまいが生成されている.ただ
し,かぎられた時間の発表のなかでは,各モデルがどのようにつ
くられていて,どのようなふるまいにつながっているのかを報告
者はよく理解することができなかった.
K. Sims: Evolving 3D Morphology and Behavior by Competition
[Long paper]
Sims は,直方体をくみあわせたかたちの人工生物が 1 対 1 のゲー
ムをおこないながら進化していく世界を実現している.再帰的構
造をふくむグラフを遺伝子として (グラフをもとに形態発生する)
GA を適用しているところがひとつの特徴である.珍奇なゲームの
例を動画で紹介し,わらいをさそっていた.GA およびそこから生
成された動画としてはおもしろいが,その動画も多数の例のなか
から Sims によって選択されたものであろう.進化 (競争学習) のモ
デルとしてはまだあまりに粗末だとかんがえられる.
T. Ray:
A Proposal to Create a Network-Wide Biodiversity Reserve
for Digital Organisms [General interest talk]
人工生命のひとつの典型的なアプローチである Tierra をネットワ
ーク (Internet)・ワイドで動作させ,コンピュータのあき時間を利
用して進化させようという構想についての話である.ネットワー
クにまたがる人工生命は魅力的なテーマではある.しかし,ネッ
トワークがおもしろいのはそれがコンピュータにとっての real
world だからだと報告者はかんがえる.Ray はこのような意味での
ネットワークをかんがえているわけではなく,以前からの Tierra
と同様に閉じた世界をかんがえているという印象をうけた.した
がって,いささか期待はずれの発表だった.
R. Beckers, et al.: From Local Actions to Global Tasks: Stigmergy
and Collective Robotics [Long paper]
Beckers らは,局所的な情報にもとづいてほとんどランダムに動作
する群ロボットにある種のバイアスをかけることによって有用な
仕事をさせようとしていると解釈することができる.このかんが
えかたは報告者が研究している計算モデル
CCM によく似ていると
かんがえられる.CCM においてもランダムさゆえにおおくのむだ
な計算がおこなわれ効率を低下させることが問題になるが,
Beckers が実験しているようなほとんどの動作がむだであるような
ロボットが実用につながるとは報告者にはかんがえられない.
1 次元の非同期セルラ・オートマタ (CA) において計算順序のラン
ダムさがどのような影響をあたえるかをしらべた結果を発表した.
すなわち,(1) ランダムさがないばあいには,CA が生成するパタ
ンのうえにその動作をきめるテーブル (規則) の性質が一部しか発
現しない (一部の遺伝子しかつかわれない) のに対して,ランダム
さがあるとすべての性質が発現すること,(2) ランダムさがあると
きにはあらわれない非常にこわれやすいパタンが,ランダムさが
ないばあいにはあらわれることなどがわかった.
何人かがこのポスターの内容に関して質問してきた.
Santa Fe Institute の
Gutwitz
は CA の権威であるが,注意ぶかくポスターを
読んでから質問してきた.しかし,かれがおもに興味をもってい
るのは CA が生成するパタンの統計的性質のようであり,まだ統
計的解析をしていないというと失望したようにみえた.また,応
用に直接関係しないこのような研究をなぜしているのかが不思議
な様子だった.CA がおもな興味の対象であるわけではなく,ラン
ダムで非同期的な計算に興味があるとこたえると,納得した様子
だった.Gutwitz をふくめて 2 人の質問者に逆になぜ非同期 CA の
研究がすくないとおもうかを質問したが,あまり明解なこたえは
えられなかった.
H. Bersini, and V. Detours: Asynchrony Induces Stability in Cellular
Automata Based Models [Short paper]
報告者はこの発表を聴講することができなかったが,重要だとか
んがえられるので報告する.
To be supplied.
M. Sipper: Non-Uniform Cellular Automata: Evolution in Rule Space
and Formation of Complex Structures [Short paper]
To be supplied.
Y. Kanada (Send comments
to kanada@trc.rwcp.or.jp)