ALife IV (4th Int. Workshop on the Synthesis and Simulation of Living Systems) 報告

報告者 : RWCP ニューラルシステム研究室  金田 泰
Written as plain text: 94-7-?.
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参照 : [RWCP ホームページ], [金田のホーム・ページ] [親ページ].


梗概

1994 年 7 月 6 日 〜 8 日に ALife IV において発表するために MIT (Cambridge, Massachusetts, USA) に出張した.この学会は人工生命に 関する最初に設立された学会であり,今回が第 4 回である (次回は 1996 年に奈良においてひらかれる予定).参加者は数 100 人で,おそらくこれまででもっとも大規模だったとかんがえられ るが,内容はこれまでの 3 回にくらべると低調だという印象をうけた. すなわち,従来の手法の改良に関する発表がおおく,非常にあたらし い内容をふくんだ発表はみられなかった.また,今回は芸術をめざし た発表はきかれなかったが,いくつかの印象的な動画 (Sims のなど) が印象にのこった.

1. ALife IV の概要

Invited Talk, 1 件 (7/6 19:30-21:00)

Tarter, J., and Horowitz, P.: Search for Extra-Terrestrial Life.

部分的に聴講した.

Plenary Talks, 4 件 (7/6-8)

4 件すべてを聴講した.

General Interest Talks, 2 件 (7/7)

2 件すべてを聴講した.

一般セッション (7/6-8)

Session 1 は逐次だが,Session 2 以降 (2 〜 6) は 2 つの並列セッショ ンによっておこなわれた.これらの一般セッションにはタイトルは ないが,並列セッションのばあいには一方は long papers,他法は short papers のセッションとなっている.Long papers は全部で 25 件, short papers は全部で 28 件である.後者は 100 人程度しかはいれな い小ホールでおこなわれたため,聴衆が席からあふれていることが おおかった.

ポスターセッション (7/7 14:30-16:15)

ポスターはとりけされたものもふくめて 55 件である.報告者はこ こで発表をおこなった.

その他

7/6 の 21:00 から MIT Press 主催の reception がひらかれたが,報告者 は出席しなかった.また,7/7 には Crambake と称する野外パーティ がもよおされた.これはその名のとおり貝などを焼いてたべるもの だが,貝よりもロブスターが主であり,1 人 2 個以上もっていかな いように厳重に管理されていた.

2. 注目すべき発表

以下,いくつかの発表について報告する.

C. Langton: Artificial Life: The State of the Art [Plenary talk]

ALife の現状と今後に関する survey である.ここでは今後の部分に ついて報告する.Langton はつくば人工生命祭のときも real world との相互作用の重要性についてかたっていたが,ここでもおなじ OHP シートをつかってそれを論じていた.われわれにとっての real world は自然物だけではなくて人工物をふくむ (Langton は明確 にいっていないが,おそらく非物理的世界をふくむ) 世界だという 点は報告者も共感する.

D. Terzopoulos, et al.: Artificial Fishes with Autonomous Locomotion, Perception, Behavior, and Learning in a Simulated Physical World [Long paper]

この発表は AI などのさまざまな技術を駆使してつくられた人工魚 についてのものである.つかわれた物理モデル,学習モデル,行 動モデルなどについての概略とビデオによる動画とがしめされた. さまざまなモデルがうまくくみあわされ,そこから自然な個体と して,および集団としての魚のふるまいが生成されている.ただ し,かぎられた時間の発表のなかでは,各モデルがどのようにつ くられていて,どのようなふるまいにつながっているのかを報告 者はよく理解することができなかった.

K. Sims: Evolving 3D Morphology and Behavior by Competition [Long paper]

Sims は,直方体をくみあわせたかたちの人工生物が 1 対 1 のゲー ムをおこないながら進化していく世界を実現している.再帰的構 造をふくむグラフを遺伝子として (グラフをもとに形態発生する) GA を適用しているところがひとつの特徴である.珍奇なゲームの 例を動画で紹介し,わらいをさそっていた.GA およびそこから生 成された動画としてはおもしろいが,その動画も多数の例のなか から Sims によって選択されたものであろう.進化 (競争学習) のモ デルとしてはまだあまりに粗末だとかんがえられる.

T. Ray: A Proposal to Create a Network-Wide Biodiversity Reserve for Digital Organisms [General interest talk]

人工生命のひとつの典型的なアプローチである Tierra をネットワ ーク (Internet)・ワイドで動作させ,コンピュータのあき時間を利 用して進化させようという構想についての話である.ネットワー クにまたがる人工生命は魅力的なテーマではある.しかし,ネッ トワークがおもしろいのはそれがコンピュータにとっての real world だからだと報告者はかんがえる.Ray はこのような意味での ネットワークをかんがえているわけではなく,以前からの Tierra と同様に閉じた世界をかんがえているという印象をうけた.した がって,いささか期待はずれの発表だった.

R. Beckers, et al.: From Local Actions to Global Tasks: Stigmergy and Collective Robotics [Long paper]

Beckers らは,局所的な情報にもとづいてほとんどランダムに動作 する群ロボットにある種のバイアスをかけることによって有用な 仕事をさせようとしていると解釈することができる.このかんが えかたは報告者が研究している計算モデル CCM によく似ていると かんがえられる.CCM においてもランダムさゆえにおおくのむだ な計算がおこなわれ効率を低下させることが問題になるが, Beckers が実験しているようなほとんどの動作がむだであるような ロボットが実用につながるとは報告者にはかんがえられない.

報告者 : The Effects of Randomness in Asynchronous 1D Cellular Automata [Poster]

1 次元の非同期セルラ・オートマタ (CA) において計算順序のラン ダムさがどのような影響をあたえるかをしらべた結果を発表した. すなわち,(1) ランダムさがないばあいには,CA が生成するパタ ンのうえにその動作をきめるテーブル (規則) の性質が一部しか発 現しない (一部の遺伝子しかつかわれない) のに対して,ランダム さがあるとすべての性質が発現すること,(2) ランダムさがあると きにはあらわれない非常にこわれやすいパタンが,ランダムさが ないばあいにはあらわれることなどがわかった.

何人かがこのポスターの内容に関して質問してきた. Santa Fe InstituteGutwitz は CA の権威であるが,注意ぶかくポスターを 読んでから質問してきた.しかし,かれがおもに興味をもってい るのは CA が生成するパタンの統計的性質のようであり,まだ統 計的解析をしていないというと失望したようにみえた.また,応 用に直接関係しないこのような研究をなぜしているのかが不思議 な様子だった.CA がおもな興味の対象であるわけではなく,ラン ダムで非同期的な計算に興味があるとこたえると,納得した様子 だった.Gutwitz をふくめて 2 人の質問者に逆になぜ非同期 CA の 研究がすくないとおもうかを質問したが,あまり明解なこたえは えられなかった.

H. Bersini, and V. Detours: Asynchrony Induces Stability in Cellular Automata Based Models [Short paper]

報告者はこの発表を聴講することができなかったが,重要だとか んがえられるので報告する.

To be supplied.

M. Sipper: Non-Uniform Cellular Automata: Evolution in Rule Space and Formation of Complex Structures [Short paper]

To be supplied.
Y. Kanada (Send comments to kanada@trc.rwcp.or.jp)