WCCI '94 (1st World Conference on Computational Intelligence) 報告

報告者 : RWCP ニューラルシステム研究室　金田　泰

Written as plain text: 94-7-?.
Rewritten by HTML: 95-10-31, Updated: 95-10-31.

参照 : [RWCP ホームページ], [金田のホーム・ページ] [親ページ].

梗概

1994 年 6 月 26 日～ 7 月 2 日に Walt Disney World Dolphin Hotel (Orlando, Florida, USA) において WCCI '94 を聴講した．WCCI は Fuzz-IEEE (International Confernce on Fuzzy Systems), ICEC (International Conference on Evolutionary Computation) および ICNN (International Conference on Neural Networks) という 3 つの学会をあわせたものであり，今回が第 1 回である (次回は 1997 年に San Diego, California, USA においてひらかれる予定である)．ただし，Fuzz-IEEE, ICEC, ICNN はそれ以前にひらかれる．すなわち，Fuzz-IEEE は 1995 年 3 月に横浜にて，ICEC と ICNN は 1995 年 11 月に Perth, Western Australia にてひらかれる．

1. WCCI '94 の概要

Tutorials, 18 件 (6/26 および 6/29)

今回は tutorial は聴講しなかった．

Public Lectures, 3 件

3 件すべてを聴講した．

Lofti Zadeh: Fuzzy Logic: Issues, Contentions and Perspectives (6/26 18:15-19:15).
Hans-Paul Schwefel: The Evolution of Evolutionary Computation (6/27 18:15-19:15).
Steven K. Rogers: How Captain Amerika uses Neural Networks to Fight Crime (6/30 18:15-19:15).

Plenary Talks, 10 件

10 件のうちつぎの 6 件を聴講した．

Kenneth DeJong: Genetic Algorithms: A 25 Year Perspective.
Henri Prade: Similarity-Based Approximate Reasoning.
Lawrence Fogel, Ph. D.: Evolutionary Programming in Perspective.
Hamid Berenji: Fuzzy Systems that Can Learn.
James C. Vezdek: What is Computational Intelligence.
Toshio Fukuda: Fuzzy-Neuro-GA Based Intelligent Robotics.

Concurrent Minisymposia, 発表 30 件

6/27 から 7/1 までの毎日 11:30ﾐ12:20 のあいだに，3 つのトラックにわかれてひらかれた．つぎの 6 件を聴講した．

6/27 Track 1: Evolutionary Computation for Optimization
- Lawrence Davis: Genetic Algorithms for Optimization: Three Case Studies.
- Bernard Manderick: How to Improve GA-Performance for Combinatorial Optimization Problems by Analyzing Their Fitness Landscape.
6/28 Track 1: Computation Imitating Life
- Ingo Rechenverg: Evolution Strategy.
- Hiroaki Kitano: Beyond AI Winter: The Double Helix of AI and Alife.
6/30 Track 1: Learning Imitating Life
- David Touretzky: Neural Representations of Space in Rats and Robots.
- Gerald Tesauro: Why does TD-Gammon Learn So Well.

FUZZ-IEEE 一般セッション

ポスターセッション以外は聴講しなかった．

ポスター (6/28, 12:20-16:00).

ICEC 一般セッション

つぎの各セッションを聴講した (他にも一部だけ聴講したセッションがあるが，ここでは省略する)．

Applications of Evolutionary Computation in Operations Research (6/27 8:00-9:40).
Representation and Operators (6/27 13:40-15:50).
Applications of Evolutionary Computation in Machine Learning (6/27 16:00-18:00).
Applications of Evolutionary Computation in Operations Research (6/28 8:00-10:00).
Genetic Programming (6/28 13:40-15:20, 部分).
ポスター (6/29, 12:20-16:00).

ICNN 一般セッション

つぎの各セッションを聴講した (他にも一部だけ聴講したセッションがあるが，ここでは省略する)．

Artificial Life (6/28 13:40-15:20, 部分).
Artificially Intelligent Neural Networks (6/28 16:00-18:00, 部分).
ポスター (6/28, 12:20-16:00).
ポスター (6/29, 12:20-16:00).
ポスター (6/30, 12:20-16:00).
Probabilistic Neural Networks and Radial Basis Functions (Special Invited Session, 6/30 13:40-15:40).
Nonlinear PCA Neural Networks (Special Invited Session, 6/30 16:00-18:00).
Optimization II (7/2 8:00-10:00).
Optimization III (7/2 10:20-12:40).

その他

6/28 には WCCI 全体の reception, 6/26, 6/27, 6/29 にはそれぞれ FUZZ-IEEE, ICEC, ICNN の reception がひらかれたが，このうち報告者は WCCI 全体の reception だけに出席した．また，ポスターとおなじ会場で journals やニューロのシミュレータなどの展示があった．

2. 注目すべき発表

以下，いくつかの発表について報告する．

[Public Lecture] Lofti Zadeh: Fuzzy Logic: Issues, Contentions and Perspectives (6/26 18:15-19:15).

Zadeh は Fuzzy の始祖であり，最近では古典的な Fuzzy 理論にとどまらない Soft Computing というものを提唱している．この講演においては Fuzzy 理論において意図し，Soft Computing において実現しようとしている Zadeh の「やわらかい情報処理」に関する基本的なかんがえを紹介している．その一部をここに記述すると，Soft Computing とは非形式的かつ正確ではないが，これは実世界の非形式性や不正確性を反映したものであり，実世界以上に「かたい」(正確でたしかな) 知識を仮定すると情報処理はうまくいかない (高価につく) と主張している．この主張は，カオス理論などの精密なモデルにもとづく複雑系の理論の立場とは対蹠的である．最近になって実世界の情報処理が急速にたちあがっていると Zadeh はいうが，その理由はこのようなやわらかい情報処理法が普及してきたからだという．われわれがこのような立場にたつべきかどうかはべつとして，これは Real World Computing に関するひとつの重要な哲学だと報告者はかんがえる．

[Plenary Talk] Lawrence Fogel, Ph. D.: Evolutionary Programming in Perspective.

Evolutionary Programming の歴史やかんがえかたなどについての講演だが，その詳細な内容はともかく，Fogel が「ノイズはよいものだ」といっていたことに共感した．
... To be supplied ...

[Plenary Talk] Toshio Fukuda: Fuzzy-Neuro-GA Based Intelligent Robotics.

それぞれ利点と欠点をもつ Fuzzy, Neuro, GA をうまくくみあわせたロボットを紹介し，知性 (computational intelligence) はこのようなさまざまな技術のくみあわせのなかからうまれてくると主張している．サルのように棒にぶらさがって移動するロボットなどのビデオが聴衆の興味をひいていた．

[Mini Symposium 6/27] Bernard Manderick: How to Improve GA-Performance for Combinatorial Optimization Problems by Analyzing Their Fitness Landscape.

GA による最適化の性能をあげるために fitness landscape の統計的な解析をつかう方法を提案している．これは遺伝オペレータ (の適用によってえられる適応度関数値列 (?)) の自己相関にもとづく方法である．報告者は CCM におけるシステムのふるまいをしらべるためにその計算過程における局所秩序度の自己相関を計算したが，そこから明確な結論をみちびきかねている．この発表は研究をすすめるためのヒントになるのではないかとかんがえられる．

[Mini Symposium 6/28] Hiroaki Kitano: Beyond AI Winter: The Double Helix of AI and Alife.

この講演の内容は，発表者による IJCAI '93 における受賞記念講演などとかなり重複している．現在は AI の冬の時代だが，発表者による分類におけるつよい非線形性がある問題や非定常な問題をとくには AI や ALife が必要であり，これらの研究をすすめて冬の時代をのりこえようという主張である．

[Mini Symposium 6/30] Gerald Tesauro: Why does TD-Gammon Learn So Well.

発表者によって開発された TD-Gammon という Backgammon のためのニューラル・ネットは最強の人間のプレヤーにも匹敵するという．この発表では TD-Gammon がつよい理由を分析している．この発表において興味をひいたことは，まずニューラル・ネットの強化学習においては線形の概念を高速に学習し，つづいて非線形の概念をゆっくりと学習しているという主張である (このような性質をうまくつかえば高速な学習が可能になる ?)．また，TD-Gammon がつよいひとつの理由は学習過程でノイズがうまくはたらいているからだという．「ノイズはよいものだ」という主張はこの学会の他のいくつかの発表においてもきかれたが，ノイズ (= ランダムさ) をとりいれた計算を研究している報告者を勇気づけることばである．

[Fuzz-IEEE 一般] Ruttkay, Zs.: Fuzzy Constraint Satisfaction

この発表は聴講できなかったが，報告者の研究にとって重要とかんがえられるので報告する．通常の制約充足においては各制約はみたされるかみたされないかの二者択一であるが，この発表における制約充足は制約がみたされる程度 (実数値) をあつかうことができる．ここではこのような fuzzy な制約を定義してその解法にも言及しているが，抽象的な範囲にとどまっている．報告者が提案している計算モデル CCM においてはこのような fuzzy な制約充足が直接的に表現できるとともに解くことができるので，この論文およびそれが参照している他の論文と関係づけることによって，まとまった研究とすることができるとかんがえられる．

[ICEC 一般] Tamaki, H., et al.: A Comparison Study of Genetic Codings for the Traveling Salesman Problem & Bui, T., and Moon, B.: A New Genetic Approach for the Traveling Salesman Problem

これらの発表は GA にもとづく方法によって TSP (巡回セールスマン問題) のよい近似解をもとめることに成功している．これらの方法はすでに単なる GA ではなく，局所探索や他のいくつかの技法を GA とくみあわせたものであり，この成功が GA によるものであるかどうかはうたがわしいと報告者はおもう．また，古典的な解法とくらべてよりよい部分もあるかもしれないが，総合的にはよりよい方法であるとはいえないとかんがえられる．

[ICEC 一般] Mikami, S., and Kakazu, Y.: Genetic Reinforcement Learning for Cooperative Traffic Signal Control

この研究では，GA をつかった強化学習によって交通信号制御を最適化しようとしている．この方法の興味ぶかい点として局所的な情報だけで大域的な最適化をしようとしていることがあげられる．その点については日本機械学会第 71 回通常総会においておなじ著者により報告されているが，今回の発表はむしろ GA の部分に力点をおいた発表だった．

[ICEC ポスター] Nakano, K., et al.: An Approach to Evolutional System

... To be supplied ...

[ICEC ポスター] Jacquelin, et al.: Pattern Fed Objects: A New Approach for Textured Image Segmentation

... To be supplied ...

[ICEC ポスター] Wada, K., et al.: Evolutionary System: Structures and Functions

... To be supplied ...

[ICNN 一般] Special Invited Session: Nonlinear PCA Neural Networks,
Karhunen, J.: Optimization Criteria and Nonlinear PCA Neural Networks,
Sudjanttos, A., and Hassoun, M.: Nonlinear Hebbian Rule: A Statistical Interpretation,
Xu, L.: Theories for Unsupervised Learning: PCA and its Nonlinear Extensions, and
Palmieri, F.: Hebbian Learning and Self-Associatin in Nonlinear Neural Networks.

これらの発表は Oja による (線形の) 主成分分析にもとづくヘブ学習をおこなうニューラル・ネットを非線形に拡張したものに関している．報告者は Oja の仕事を知らないので十分には理解できなかったが，Oja の仕事にも興味をもつとともに，Sudjarittos らの発表における，非線形の主成分分析のためには入力データの統計的分布に応じて sigmoid や sinusoidal の特性をもったニューロンが必要になることなどに興味をもった．

[ICNN 一般] Usami, Y.: Solving Traveling Salesman Problem by Real Space Renormalization Technique

この発表は聴講できなかったが重要とかんがえられるので報告する．
... To be supplied ...

Y. Kanada (Send comments to kanada@trc.rwcp.or.jp)