情報処理学会 第 46 回 全国大会 報告
報告者 :
RWCP
情報統合研究室
金田 泰
Written as plain text: 4/6/93.
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参照 :
[RWCP ホームページ],
[金田のホーム・ページ],
[親ページ].
3/24 〜 25 に情報処理学会全国大会を聴講するために工学院大学 (西新宿) に出張した.
聴講したセッションはつぎのとおりである.
- 4D ニューラルネットワーク
- 5A 招待講演 (2)
- 6A パネル討論
- 7D 遺伝的アルゴリズムの応用
- 8E 遺伝的アルゴリズム
- 9Q 交通への応用
以下,いくつかの発表について報告する.
5A
招待講演 (2) : コンピュータを見直す -- 人文科学とコンピュータ --,
杉田 繁治 (国立民俗学博物館)
(3/25, 12:30-14:00)
つぎのパネル討論とともに,慶応大の相磯教授の企画による.異分野のひとの意見をきいて,情報処理
のあらたな発展方向をさぐることを意図したものである.民俗学博物館においては文献および物的な資料の
マルチ・メディア・データベース化が積極的にすすめられており,そのためにつねに最新の計算機と入出力
機器が導入されてきた.物的資料の画像をそのまま保管するだけではなく,輪郭抽出などの画像処理もおこ
なっている.この発表ではこうしたデータベース化の状況が報告されるとともに,コンピュータ産業への批
判がのべられた.すなわち,現在のコンピュータ産業は外国から導入された技術をユーザにおしつけていて,
ユーザの立場にたっていないということである.この発表とは関係ないが,東京大学の杉本教授の著書「手
作りスーパーコンピュータへの挑戦」のなかでも同様の批判がのべられている.RWC においても研究をユ
ーザの立場からみてみることが必要であろう.
6Aパネル討論 : 情報処理の新分野を探る,
パネラ : 杉田 繁治 (国立民俗学博物館), 松岡 正剛 (編集工学研究所),
岡林 みどり (ポーラ文化研究所), 平田 圭二 (ICOT), 服部 桂 (朝日新聞社)
(3/25, 15:00-17:00)
相磯氏による企画意図の説明とパネラの紹介のあと,招待講演者である杉田氏以外のパネラのはなしを
20 数分ずつきいた.それぞれまったくことなる内容だが,興味をひかれた.岡林氏は化粧とくに男女の髪
型が意味するものを,クリントン大統領や小和田雅子さんを例にとって解説したあと,情報処理とのかかわ
りにふれた.服部氏は編集長をつとめている雑誌「朝日パソコン」の編集方針などにふれたあと,遺伝的ア
ルゴリズムと人工生命の研究紹介をした.平田氏はおもに 93 年度に発足する音楽情報研究会を紹介した.
松岡氏は「編集」という概念について説明したあと,現在すすめているオペラ・プロジェクト (たとえばシ
ンデレラのようなさまざまな物語の分類・分析をおこなっている) について解説した.そのあとディスカッ
ションがおきなわれたが,わずか 15 分しか時間がなかった.情報処理の新分野を把握するところまではい
かなかったが,そのためのきっかけをあたえることはでき,企画は一応成功したといってよいのではないか
と報告者にはかんがえられる.
4D-4
ボルツマンマシンによる論理型言語の推論実行, 川原 英哉 他 2 (都立科技大)
論理型言語のプログラムをニューラル・ネットにコンパイルして実行する方法に関する発表である.こ
の方法では論理変数は大域的な変数におきかえられる.ボルツマンマシンの性質上,論理型言語がもつおお
くの性質はうしなわれるが,電総研の橋田氏の方法と同様に論理によって記述された問題を動力学的にとく
という点で報告者は興味をひかれた.リストのような可変長のデータ構造や再帰よびだしがあつかえるかど
うかという点に疑問を感じたので質問した.こたえは「あつかえる」というものだったが,じつはコンパイ
ル時にきめられたながさ,ふかさ以下のばあいしかあつかうことができない.「論理型言語をコンパイルす
ることにこだわるなら真に可変長の再帰をあつかえるようにするべきだし,こだわらないなら論理型言語と
いうことばをつかわないほうがよい」とメイルでコメントしておいた.
8D-4
遺伝的アルゴリズムによる TSP の高速解法, 仙石 浩明, 吉原 郁夫 (日立システム開発研)
GA による巡回セールスマン問題の解法にはさまざまなものがあるが,形質がうまく遺伝されるような交
叉方法のくふうや,突然変異をよいものにかぎるなどのくふうをすることによって,より高性能な方法を実
現している.30 都市の TSP を Grefenstette の方法よりはるかに高速によりよい解をもとめている.しかし,
この努力を他にむければ,よりよい研究にむすびつくものと報告者にはおもわれる.
9Q-6
標準計画の修正に基づく車両割り当て作成方法, 土屋 隆司 (鉄道総研)
このセッションを聴講した目的は,報告者がすすめている計算モデル CCM の適当な応用先をみつけるこ
とであるが,この意味でもっとも興味をひかれたのがこの発表である.古典的な記号制約問題の解決器およ
びシミュレーテッド・アニーリングをつかって,列車運行における車両わりあてを自動的におこなうシステ
ムを開発し,現場で試用している.車両わりあてがみたすべき制約にはダイヤからくる固定的なものと整備
のつごうなどからくる可変的なものとがあるので,前者の制約だけをかんがえた標準計画をあらかじめ作成
しておき,それを初期状態として後者の制約だけをみたすことによって計画を作成している.報告者が質問
したところ,車両わりあてにかかわる制約は 2 〜 3 種類に分類できるため,計画問題としてそれほど複雑な
ものではなく,問題解決はそれほど困難ではないというこたえだった.それが事実ならば,CCM の応用と
してはものたりない.
Y. Kanada (Send comments
to kanada@trc.rwcp.or.jp)