(次世代) インターネットにおいてなぜ QoS 保証が必要か,その最大の理由を輻輳にもとめて,電話網と比較しながら,また,あたらしいニーズとの関係においてのべる.
QoS 保証が必要になる最大の理由は輻湊 (congestion) である.ネットワーク・トラフィックの量がかぎられていれば,特別のくふうをしなくても QoS 保証において問題はほとんどおこらないからである.
輻湊をさけるため,第 1 に電話網においてはアドミッション制御がおこなわれる. すなわち電話網においては QoS が保証できないときにはあたらしいサービス要求 (セッション確立要求) を拒絶する. しかし,インターネットにおいては通常はこのような制御がおこなわれない. そのため,電話網においても輻湊は発生するが確立されたセッションに対しては QoS が保証されるのに対して,インターネットにおいては輻湊が発生すると緊急通信もふくめて,すべての通信セッションの品質が極端に低下する可能性がある.
第 2 に,電話網においては個々の呼を確立する際に,輻湊がおこらないルートを検索して使用する. これに対して,従来のインターネットのルーティングにおいては輻湊は考慮されない. そのため,特定のネットワーク・ノードにトラフィックが集中して輻湊が発生するという現象がおこりやすい. これをさけるには,ルート (データパス) の設定において QoS を考慮する必要がある.
また,輻湊以外の要因として,近年しだいに QoS 保証を必要とするアプリケーションが増加してきていることがその必要性をたかめている. すなわち,90 年代にはいってからインターネット上でリアルタイム・アプリケーション (音声や動画) がつかわれるようになり,またビジネス向けの高品質なサービスももとめられるようになってきた. また,データ通信が音声通信を量的にうわまわり,電話網上に IP 網を構築するより IP 網の上に電話網を構築したほうが効率的なことから,電話網に匹敵する品質をインターネットで実現することが必要となってきている. これはインターネット側からみた表現であるが,電話網の側からみればインターネットに匹敵する (あるいはそれ以上の) 柔軟さをあたらしい電話網すなわち NGN において実現することが目標となっている.