残響は初期反射と後期残響とから構成されるが,このうち初期反射について説明する.
初期反射の計算法としてはつぎの 3 つをはじめとして,さまざまな方法がある.
- Image source method [All 79]
- 部屋の壁,天井,床を鏡面とみなし,反射音を鏡面の反対側にある音源の像からの音として計算する方法である. この方法は部屋の面における乱反射がすくないときには適している.
- 光線追跡法 (ray tracing method) [Kro 68]
- 音が進行する直線をたどりながら計算する,グラフィクスにおける光線追跡法とおなじ方法である. 光線追跡法は 乱反射があるときは反射音それぞれの直線をたどるため,計算量がおおきい.
- 光束追跡法 (beam tracing method)
- 光線追跡法と同様に音の進行する方向に計算をすすめるが,線の束ごとに計算をおこなう. そのため,光線追跡法よりすくない計算量でより正確な計算ができる可能性がある.
これらの方法はたとえば Funkhouser [Fun 03] がサーベイしている.
これらの方法は,部屋のおおきさや形状にもとづいてできるだけ正確なシミュレーションをおこなうことをめざしている. 部屋のおおきさや形状にもとづくシミュレーションが認知的に効果をあげているのかどうかはほとんど実験的にたしかめられていないようである. EAX (Envi-ronmental Audio Extensions) [Cre 01] をはじめ,音声 3D 化をおこなうおおくのシステムにおいては,部屋の形状やユーザの位置などの情報をあたえないため,部屋の形状やその中での位置は残響の計算において考慮していない.
参考文献
- [All 79] Allen, J. B. and Berkley, A., “Image Method for efficiently Simulating Small-Room Acoustics”, J. Acoustical Society of America, Vol. 65, No. 4., pp. 943–950, April 1979.
- [Cre 01] Creative Technology, “Environmental Audio Extensions: EAX 2.0, Version 1.3”, http://www.sei.com/algorithms/eax20.pdf.
- [Fun 03] Funkhouser, T., Tsingos, N., and Jean-Marc Jot., “Survey of Methods for Modeling Sound Propagation in Interactive Virtual Environment Systems”, Presence, 2003.
- [Kro 68] Krockstadt, U. R., Calculating the Acoustical Room Response by the Use of a Ray Tracing Technique, J. Sound and Vibrations, Vol. 8, No. 18, 1968.