マルチキャストのための IPv6 アドレスについてのべる.
マルチキャスト・アドレスの形式
マルチキャストにおいてはひとつのアドレスによって,マルチキャスト・グループを構成する複数のノードが指定される. アドレスの最初のバイトは 0xFF (255) である. ひとつのノードは複数のマルチキャスト・グループに所属することができる. あるマルチキャスト・アドレスにあててパケットが送信されると,そのマルチキャスト・グループに属するすべてのメンバーがこのパケットを受信する. マルチキャスト・アドレスの形式はつぎのとおりである.
0 8 12 16 128 +--------------------+----------+----------+---------------------------/ /---------------------------+ | 11111111 | フラグ | スコープ | グループ ID | +--------------------+----------+----------+---------------------------/ /---------------------------+
先頭の 1 バイトが,このアドレスがマルチキャスト・アドレスであることをしめす. つづく 4 bit はフラグであり,つぎの 4 bit がスコープ (グローバル,サイトローカル等) をあらわす. 下位 112 bit がマルチキャスト・グループ ID である.
IPv6 におけるマルチキャスト・アドレス指定
IPv6 マルチキャスト・アドレスは,フォーマット・プレフィクス 1111 1111 (0xFF) で予約されわりあてられる. 次のリストは IPv6 マルチキャスト用に予約され,IANA (Internet Assigned Numbers Authority) に登録されている IPv6 マルチキャスト・アドレスの一覧の一部である.
- FF02
- リンクローカル・スコープ
- FF0E
- グローバル・スコープ
IPv6 のマルチキャスト・アドレスの説明
IPv6 においてはつぎのようなマルチキャスト・アドレス (well-known multicast address) があらかじめ定義されている [RFC 2375].
- FF02::1
- 同じリンク上のすべてのノードに到達するためのすべてのノードのアドレス.
- FF02::2
- 同じリンク上のすべてのルータに到達するためのすべてのルータのアドレス.
- FF02::4
- 同じリンク上のすべての DVMRP マルチキャスト・ルータに到達するために使うすべての DVMRP (Distance Vector Multicast Routing Protocol) ルータのアドレス.
- FF02::5
- 同じリンク上のすべての OSPF ルータに到達するために使うすべての OSPF (Open Shortest Path First) ルータのアドレス.
- FF02::6
- 同じリンク上のすべての OSPF 指定ルータに到達するために使うすべての OSPF 指定ルータのアドレス.
- FF02::1:FF/104
- リンク層アドレスにリンクローカル・ノードの IPv6 アドレスを解決するためのアドレス解決処理に使う要請ノードのアドレス. 要請ノードのアドレスの最後の 24 ビットは IPv6 ユニキャスト・アドレスの最後の 24 ビットです.
1 つの IPv6 マルチキャスト・アドレスが 1 つのマルチキャスト・グループを特定する. 各グループのために予約された IPv6 アドレスはグループのアドレスに送信された IPv6 メッセージに応答し,これを受信するグループのすべてのホスト・メンバによって共有される.
IPv6 マルチキャスト・アドレスは,予約された一連のメディア・アクセス制御 (MAC) のマルチキャスト・アドレスにマッピングされる. IPv6 マルチキャスト・アドレスのイーサネット MAC アドレスへのマッピングの方法は RFC 2464 (Transmission of IPv6 Packets over Ethernet Networks) に記述されている.
参考文献
- [Hag 07] Silvia Hagen, “IPv6Essentials, Second Edition”, O'Reilly, 2007. (邦訳: 市原 英也 監訳, “IPv6 エッセンシャルズ 第 2 版”, オライリー・ジャパン, 2007).