従来のインターネットにおいては IP 電話等のリアルタイム通信の品質を確保するのは容易でなかった. それは通信の一方の端点から他方の端点までの全体の品質つまり端点間 QoS (サービス品質) を保証するしくみがなかったからである. これに対して NGN においては端点間での通信の遅延やジッター (時間方向のゆらぎ),データ損失を指定値以下におさえる端点間 QoS 保証をおこなうことが目標とされ,そのための機構が用意されている.
従来の電話網は基本的には音声だけを扱ったが,NGN においては音声だけでなく動画,テキストや数値などのデータなどを含む様々なマルチメディア情報が扱われる. そのため,QoS 保証も通信の内容や性質などに応じて様々な内容が求められる. そこで第 3 世代の移動通信に関する標準化を行っている 3GPP の標準においては,つぎのような 4 個の QoS クラスが定義されている.
- 会話クラス (conversational class)
- 遅延がちいさく (たとえば < 80 ms),ジッターも小さい,電話の音声や画像のためのクラス.
- ストリーミング・クラス
- 遅延は中くらいであり (たとえば < 400 ms),ジッターは小さい,ス トリーミングや放送などのためのクラス.
- インタラクティブ・クラス
- 遅延はちいさいが (たとえば < 80 ms),ジッターについては規定し ない (保証要求しない),ネットワークの制御や Web などのためのクラス.
固定電話等に関する標準化をおこなっている ITU (International Telecommunication Union) においては,これらに対応する 4 クラスのほかにさらに 4 クラスをあわせた Y.1541 という標準が作成されている.
端点がこれらの QoS クラスや個別の保証要求をネットワークに伝えるための方法として,NGN においては大別するとつぎの 2 種類の方法が用意されている.
- SIP による要求
- SIP (Session Initiation Protocol) は端点間で会話などの通信の制御 (よびだし,応答,終了など) のためのプロトコルであり,IP 電話などにおいて広く使用されている. この方法においては SIP メッセージ中に QoS 保証要求を乗せる. または SIP メッセージ中の QoS 以外の情報から必要な QoS 条件をネットワーク側でもとめて保証する.
- 資源要求プロトコルによる要求
- 通信に必要な通信帯域などの資源を要求するためのプロトコル として,インターネットに関する標準化をおこなっている IETF (Internet Engineering Task Force) において標準化された RSVP (resource ReSerVation Protocol) や標準化中の NSLP (NSIS Signaling Layer Protocol — NSIS はワーキンググループ名) というプロトコルがある. このようなプロトコルを使用することによって QoS 保証要求を行う.