コンピュータ・システムやコンピュータ・ネットワークを遠隔管理するためのフレームワークやプロトコルとしては多種多様なものがあり,それらを整理するのも困難なほどである.
非標準のプロトコルとしては,機器ごとにさだめられたコマンドライン・インタフェース (CLI) がつかわれてきた. CLI は機器に直接コマンド入力するときに使用されるが,Telnet 経由で使用すれば遠隔操作することもできる. CLI はおもに人間のオペレータが操作するためのインタフェースであり,管理システムからもつかわれるが機械的な操作には不向きである.
管理システムからの使用に適した,IP ネットワークのもとでつかえるプリミティブな標準プロトコルとしては IETF (Internet Engineering Task Force) の SNMP (Simple Network Management Protocol) [RFC 3411] がある. SNMP はネットワーク管理のために開発されたプロトコルであり,ネットワーク機器やコンピュータなどがもつ MIB (Management Information Base) とよばれる木構造のデータを他のコンピュータからよみだしたり,そこにかきこんだりする機能をもっている. この単純な操作をくみあわせることによって複雑な管理操作もおこなうことができるが,現実的ではない. そのため IETF においては,複雑な情報を表現しやすい XML ベースでネットワーク機器などに設定するためのプロトコルとして NetConf [RFC 4741] が開発されている.
また,汎用的な管理のための標準として,DMTF (Distributed Management Task Force) においては MIB とはちがって概念的なデータ構造 (オブジェクト) を表現することができる CIM (Common Information Model) が標準化されている. また,CIM によって記述された管理対象を操作するための標準プロトコル群として WBEM (Web-Based Enterprise Management) がさだめられている.
汎用的なシステム管理のための標準としては,ほかに Web サービスにもとづく WS-Management がある. WS-Management も CIM などの DMTF 標準にもとづいている.
以上のフレームワークやプロトコルは汎用性がたかいものだが,より範囲をしぼったフレームワークやプロトコルが多数ある. WAN と LAN とをつなぐブロードバンド・ルータなどの CPE (Customer Premise Equipment, 顧客前置装置) の管理のために DSL Forum において TR-069 というプロトコルが開発され,デファクト標準となっている. また,PC を遠隔で操作して障害の原因などを調査するためのクライアント遠隔管理の標準として,DMTF において 2007 年に DASH (Desktop and mobile Architecture for System Hardware) が規定された. ほかにも分野や目的ごとにさまざまなフレームワークやプロトコルが規定されている.