MMPP (Markov Modulated Poisson Process) はインターネットのトラフィックでみられるような,バースト性のあるトラフィックを生成するための方法のひとつである.
Adas [Ada 97] は自己相似型トラフィック生成法をふくむさまざまなトラフィック・モデルをまとめている. それらのなかで,ここでは MMPP をとりあげる.
長時間の依存性をもつトラフィックを発生させる方法として,さまざまな研究者によって MMPP (Markov Modulated Poisson Process) を使用する方法が研究されている ([Hef 86] [Mus 03] [Hey 03] など). MMPP とはマルコフ連鎖の各状態のあいだを遷移しながら,状態ごとにパラメタがこと なるポアソン分布のトラフィックを生成するモデルである. そのもっとも一般的なかたちは図 1(a) のようになる. あらかじめきめられた任意の数の状態のあいだを遷移しながら,状態 si にあると きには λi をパラメタとするポアソン分布にしたがってパケットを生成する (パケットを生成したり 生成しなかったりする). 状態 si におけるパケット生成確率は P(λi) である (P(λ) はポアソン分 布). 状態遷移は任意の状態のあいだで発生し,その確率は独立にきめられる.
(a) 一般的なモデル (b) 生成消滅型モデル
図 1 MMPP
しかし,この一般的なモデルには膨大なパラメタがあるため,それを推定する (きめる) のがむずか しい. また,モデルの意味もあきらかでない. より制限されたかたちのモデルとして,図 1 (b) の生成消滅型マルコフ連鎖を使用したモデルがある. ここでトラフィック生成源の生成確率が p, 消滅確率が q である. このモデルにおいてはトラフィック生成源が 1 個ずつ生成したり消滅した りする. 状態 s0 がトラフィック生成源がない状態であり,状態 s0 におけるパケット生成確率 P(λ0) は 0 であるべきである.状態が s1, s2, … とすすむにつれてパケット生成確率 P(λi) がた かくなる.
MMPPを使用したトラフィック生成器としてつぎのようなものがある. Muscariello らは MMPP にも とづくトラフィック生成器をふくむネットワーク・シミュレータ ns-2 を公開している [Mus 05]. ただし ns-2 はシミュレータにくみこまれているので,実際のトラフィックを発生するわけではな い. Abdo ら [Abd 05] は FPGA を使用した MMPP をふくむ各種のトラフィックを発生することがで きるトラフィック発生器を開発し,50 Mbps の性能をえている. このトラフィック発生器は FPGA を使用した試作品であり,また性能がひくいため今回の実験には適さない.