省電力化の効果を測定する際に,計算処理量やネットワーク・トラフィック量などから消費電力を推定することもできるが,より確実な方法は電力そのものを測定することである. 消費電力を実際に計測するための電力計測機器がある. ここではそれらについてまとめる.
積算電力計
電力計測のためのもっともポピュラーな機器は積算電力計だろう. 積算電力計にはさらにさまざまな種類のものが存在するが,とくに家庭用のそれはほとんどのひとにとって,なじみぶかいものである. 従来は人手で計測がおこなわれていたが,しだいに電力線等を介した自動計測に移行している.
通信機能のない計測機器
個別の機器の消費電力をできるだけ低コストで計測する目的で開発された機器は,簡易型電力量表示器,ワットチェッカー,電源チェッカーなどの名称で,製品として多数存在する. ネットワーク経由の通信機能はないが RS-232C や GP-IB などのインターフェースによってパソコン等と接続できるものもある. 製品例をあげる.
- サンワサプライ TAP-TST5
- 1 個の機器の電源プラグをさしこんで,電圧,電流,電力,皮相電力,周波数,力率,積算電力量,積算時間を測定することができる.
ネットワーク利用の集計機能をもつ計測機器
Ethernet などの既存のネットワークまたは計測専用のネットワークを使用して集計をおこなうさまざまなタイプの電力計測機器が開発されている. 積算電力計もそのひとつだが,研究レベルのものとして,つぎのような例がある.
- ACme
- Xiaofan Jiang [Xia 09] らは IPv6 の無線ネットワークを経由して計測結果をつたえる計測機器 ACme を開発している.
製品としては,たとえばつぎのようなものがある.
- Raritan Dominion PX
- 計測だけを目的にしたものではなく,データセンタなどにおける IT 機器の消費電力や電源管理のためのさまざまな機能をもっている. Web インターフェース,シリアル・インターフェース,SSH/Telnet,SNMP などによってコンセント単位の消費電力を計測したり,電源の on/off,電源投入順序などの設定をおこなうことができる. ユーザ認証などのセキュリティ機能も充実している.
- 横河電機 WT210 / WT230
- 50 A までの電流と電圧,電流,有効電力,無効電力,皮相電力,力率などを計測することができる. 計測結果はパソコンから RS-232C または GP-IB によってよみだすことができる.
- 横河電機 PR300
- 電源ボックスなどにブレーカごとに設置して電圧,電流 (1 ~ 5 A),有効電力,無効電力,皮相電力,回生電力,積算電力,周波数,力率,デマンド電力,デマンド電流などを計測するとともに,その結果を RS-232C, Ethernet などを通じてパソコンからよみだすことができる. また,複数の PR300 を RS-485 によってカスケードで接続することができる.
- 横河電機 UPM100
- PR300 の旧製品とかんがえられるが,Ethernet による通信機能がないかわりに,オプションとして無線通信機能をもっている. 2.4 GHz の SS 通信により,複数の UPM100 の計測結果を 1 台のパソコンからよみだすことができる.
参考文献
- [Xia 09] Xiaofan Jiang, SDawson-Haggerty, S., Dutta, P., and Culler, D., “Design and Implementation of A High-fidelity AC Metering Network”, 2009 Int'l Conf. on Information Processing in Sensor Networks, pp. 253-264, 2009.