ネットワーク機器の省電力化がもとめられる背景としては,トラフィックの増大やそれに対応するためのネットワークの大規模化もあるが,個々の機器に関してもさまざまな課題がある. アラクサラの講演 [Ala 08] の内容にもとづいて,これらの背景や課題についてのべる.
ハイエンドルータの高速化と電力増加と電力効率
ハイエンドルータの装置あたりの処理能力は,これまで年率 60% 程度で増加してきた. これに対し装置あたりの消費電力は年率 30% 程度で増加してきた. 各社の公表値を単純にプロットするだけで,あきらかなトレンドをよみとることができる.
ここから,LSI の技術進化により,ハイエンドルータの電力効率すなわち転送性能あたりの消費電力はこれまで年率 30% 近い改善がなされてきたことがわかる. しかし,この改善率よりトラフィックの増加率のほうがたかくて,電力全体は増加している. したがって,今後もさらに改善する必要がある. ところが現在では LSI のリーク電流などの要因で改善効率が鈍化してきている. このため,LSI 技術の進化を期待するだけではなく,ルータのアーキテクチャレベルでの省電力技術開発が必須だとかんがえられる.
トップランナー方式の適用
トラフィック増加によって電力消費が増大しているなかではネットワーク機器の省電力化がとりわけ重要である. そこで,経済産業省ではルータにもトップランナー方式を適用し,省エネ基準が策定されてきた.
ここでトップランナー方式とは,省エネ法で指定する機器たとえば乗用車やエアコ ン,テレビ等の省エネ基準を,最も省エネ性能が優れている機器の性能以上に目標基準 値として設定し,目標年度までにクリアすることを義務づける方式である. もちろん技術開発がともなうので規準適用は法制化から 3~4 年後を開発準備期間とし,それまでは表示義務が生じる.
トップランナー方式のネットワーク機器への適用においては,小型ルータや L2 スイッチへの適用が先行したが,その後,L3 スイッチもふくむハイエンドルータにも適用されるようになっている.
参考文献
- [Ala 08] “グリーンITに向けた省電力技術への取り組み”, Interop Tokyo 2008 ブースセミナー資料, アラクサラネットワークス株式会社, 2008.