工学院大学では遠隔講義に Zoom をつかうことが禁止され,かわりに G Suite の使用がすすめられていたため,私にとってははじめての遠隔講義を 9 月からはじめるにあたって,G Suite を駆使してオンラインで授業をする方法をかんがえた. しかし,やってみると G Suite だけではとじないことがわかった. G Suite だけですまなかったおもな理由は Google Classroom がつかえなかったことだが,それにともなって学生にいろいろな混乱をおこしてしまった.
ここ何ヶ月かのあいだに,なにがおこったのかをふりかえってみる. 例年と同様に学生に 2 回のレポートを課すことにしていたが,G Suite だけではレポートのあつかいが一部しかできなかった. つまり,レポートを提出してもらうことは Google Form でできるが,採点したレポートを返却するには別の方法が必要だ. Google Classroom がつかえればそれでレポートの提出から採点・返却までできるが,それができないので CoursePower という,コロナ禍以前から用意されていたシステムを一部つかう必要があった. 一部の学生はレポートを Google Form から提出したが,のこりの学生には CoursePower をつかってもらった. G Suite とくらべるとつかいかたが直観的でなくてわかりにくいので,G Suite と CoursePower にまたがったことによる混乱にくわえて,私自身が CoursePower のつかいかたをあやまったために,学生をさらに混乱させた.
まだレポートの一部の採点がおわっていないし,授業ものこっている.しかし,これまでの学生の反応やレポートの内容をみると,今年の授業はあまりうまくいかなかったといってよいとおもう. 結論は試験まで全部おわってからだすことになるが,これまでのところでは失敗点としてつぎの 2 点をあげることができる.
今回は Google Form で学生に「手をうごかして」もらう授業をめざしてきたが,それは失敗したようだ. 手をうごかしてもらうという方針は,昨年まで教室内でほぼ毎回,小演習をしてきたことをひきついだものだ. 教室での小演習はその結果がすぐにはみえないのに対して,Google Form では結果がすぐに集計されることがつよみであり,それをいかそうとしてきたつもりだ. しかし,教室であれば学生が書いているところをみることができるのに対して,遠隔授業では学生が結果を送信してくるまでは,なにをしているのかがまったくわからない. それが最初おもっていた以上に問題だったとおもう. 送信してくるのは,だいたい,聴講している学生の半分にもみたない. あとの学生がなにをしているのか,ビデオも音声もないので,まったくわからない. 成績はレポートと試験だけできめることにしたのだが,小演習にこたえたかどうかも,そこにすこしだけ反映させるべきだったのかもしれない. そうすれば,もっとこたえる学生をふやすことができただろう.
もうひとつの失敗は,まだ検証されていないので仮説だが,学生に「参加意識」をもたせることができなかったということではないかとかんがえられる. 講義をきいている学生も,どれだけ「参加している」意識があるのか,わからない. 教室にいれば参加意識があるだろうが,音をきくだけで参加している気にならない学生は,それを聞き流して,理解しないままになってしまったのではないかとおもわれる. 成績に反映させることで小演習への「参加」をふやすことができれば,参加意識ももうすこしたかまっただろう.
ネットで遠隔授業について書いたものを検索してみると,「参加」させるため (ということばではなかったとおもうが) にはビデオが重要だと書いてあるものがある. 学生が教師をみられるようにすること,また教師が学生をみられるようにすること (こちらは強制するべきでないという意見もある),それがないと学生を「参加」させることがむずかしいようだ. 音とスライドだけで学生をずっとひきつけておくことは,よほど興味深い内容の講義でなければむずかしいだろう.
コメントする