Return-Path: owner-vag@oskgate0.mei.co.jp Date: Mon, 18 Sep 1995 19:04:03 -0900 From: funaken@ccs94.cla.kobe-u.ac.jp (Takeo Funahashi) Subject: [VAG 33] [Kirokushitsu Tsuushin]No.10 ...[中略]... ##################### 記録室通信(Renewal) 16-Sept-1995 第10号 ##################### Quake Chronicle Project 震災・活動記録室 −はじめに− 皆様、いかがお過ごしでしょうか。「震災・活動記録室」です。被災地の 夏も、もう終わりを告げようとしていますが、これから寒くなってくるにつ れて、また様々な問題が生じてくることだと思います。今後とも、引き続き 記録室は、そのような「問題点」をまとめていきつつ、現場と後方をつなぐ 何らかのお役に立てるように努力していきますので、どうかよろしくお願い いたします。 それでは、記念すべき2ケタ突破!第10号をお送りいたします。 (「記録室通信」担当:舟橋健雄) −記録室通信とは− 記録室では震災後のボランティア活動の記録を残すことを目的として、 アンケート調査、インタビュー取材などを中心に活動してきました。同時 に各団体から活動の資料を提供していただき、目録を作成して将来公開す るための準備を進めています。そして、活動の中で出会ってきた皆さんと の情報交換の場として、また新たな出会いの場として、毎週「記録室通信」 を発行しています。被災地での最新情報、全国のボランティアの動き、支 援活動でつかんだノウハウの紹介等の発信を考えています。 −お知らせ− 来週9月23日発行予定の「記録室記録室通信第11号」は、臨時休刊 させていただきます。現在、記録室は独立後の新しい基盤作りのために日 々奮闘していて、それに伴う大量の事務・雑用が発生するからです。また、 今後は記録室通信をもっと中身の濃いものにしたいということもあります ので、その準備期間ということで1週間休みをとらせていただきます。 第11号は、9月30日(土)に発行予定です。 −現地からの最新情報− このコーナーでは、被災地で起こった様々な出来事を後方支援の方々へ 詳しく知っていただくと共に、同じ現地で活動を続ける者同士でも考える きっかけになるように、今後は、さまざまな問題提起等もしていきたいと 思っております。皆様の率直なご意見・ご感想等をお寄せ頂ければ嬉しく 思います。 <<仮設住宅での孤独死を考える>> みなさんは、下の新聞記事をご存じでしょうか?これは、9月14日 (木)の神戸新聞・夕刊からの引用ですが、この記事が大波紋を引き起こ しました。 --------------------------------------- 仮設孤独死2カ月後発見 西神 ボランティア分からず 十三日午後七時十分ごろ、神戸市西区平野町の西神第七仮設住宅の 室内で、男性が死んでいるのを仮設住宅の自治会役員が見つけた。 神戸西署の調べによると、同住宅に一人暮らしをしていた小林照生 さん(五六)。約二ヶ月たっており、死因は肝硬変と食道静脈りゅう 破裂とみられる。テレビとエアコンはつけっ放しで、玄関に入ったと ころで、あお向けに倒れていた。 ボランティアが何回か訪問していたが、確認できなかったという。 (神戸新聞(夕刊)9月14日(木)の記事) --------------------------------------- 仮設住宅内での独居老人による孤独死の問題は、これが初めてではない のですが、今回の記事は、ボランティアが仮設住宅へのケアを行っていな がらも起こった事件であるというのが問題なのです。 これに関して、仮設住宅支援連絡会のミニコミ誌「じゃりみち」の号外 が9月15日(金)に発信されましたので、まず、その「じゃりみち号外」 を以下に全文掲載させていただきます。みなさんも、この号外を読んでい ろいろと考えていただきたいと思います。 --------------------------------------- 9月15日 じゃりみち−仮設支援情報− 号外 −ボランティアだけでは孤独死は防げない!!− 9月14日神戸新聞夕刊に“仮設孤独死2カ月後発見 ボランティ ア分からず”と記事が出ました。読まれた方も多いと思いますが、み なさんどのように感じられたでしょうか? この西神第7仮設は全ての仮設群の中でも、最大規模の1060戸が 入居している地域であります。 相次ぐ孤独死が報じられる中、だだっ広い造成地の中に建ち並ぶ仮 設群を訪れると、ただ茫然とするばかりですが、6月初め、あるボラ ンティア団体は活動拠点としてその地にテントを張り、この1060戸 のケアを決意したのです。自治会結成にも大きな役割を果たしました。 毎日毎日、安否情報を繰り返すのですが、未入居約50戸を除いた 1000戸の一軒一軒の顔が見えてきたのは、ようやく8月の後半にな ってのことです。安否情報だけでなく、階段を作ったり、玄関と道路 の間に踏み板をわたしたり、水はけをよくするために溝を掘ったりと、 うだるような真夏の炎天下でも作業を続けてき、リーダーの一人はと うとう熱射病で倒れるということもありました。 仮設訪問をしているボランティア団体には1つの共通することがあ るように思います。それは「2度と死者がでないように!」と祈るよ うな思いで仮設をまわっていることです。相次ぐ孤独死のことが報じ られている時、新聞を見るのがこわいという現象もあったようです。 死亡者を出さないようにボランティアは必死で頑張っています。し かし冒頭で紹介した記事の見出しを見ると、孤独死を発見できなかっ たのはボランティアの責任のように書かれています。警察や行政のこ とにはまったく触れていません。福祉事務所はどうしていたのだろう か?次々に疑問が涌いてきます。 孤独死がでるとしばらくはその仮設には警察官や保健婦、民生委員 等が毎日のように訪問するという現象が起きます。私達ボランティア がまわっていると、この時だけはよく出会うのです。しかしそのうち に全く出会わなくなるのです。相変わらずまわっているのはボランテ ィアと自治会だけとなるのです。この現象がはっきりと物語るのです が、死亡者が出てから慌ててまわっても後の祭りであって、どうして 未然に防ぐことを考えられないのでしょうか? 例えば神戸市は「震災後に高齢者・障害者児童を対象に実施した 『要援護者実態調査』によると震災による新たに福祉ニーズを生じた 市民は2800人余り」(平成7年7月神戸市発表の「市民福祉復興プ ラン」より)と言っています。 もちろん震災前から対応していた福祉ニーズとの関連はあるが、要 するに新たに生じた対象者が2800人ならば、警察・消防署・行政・ 市民・ボランティアがもっと有機的に調整をすれば確実にケアのでき る数字だと確信します。この部分をまず解決するとともに、要援護者 の対象に入らない65歳以下のグレーゾーンをどのようにケアするの かを至急検討する必要があります。何故なら死亡者の半数以上は65 歳以下なのです。しかも重要なのはお茶会等を呼びかけても、訪問活 動をしても、全く表に出てこない人達(特に何度も何度も訪問しても 留守で会えない入居者)が要ケアだと考えられます。 警察・消防署・行政・市民・ボランティア各々「死者をださないよ うに」と願っているはずです。五者の話し合いがしっかりできない以 上、解決はありえないのではないでしょうか? この「じゃりみち」をいつも読んでいただいてる方で、安否確認に 関して何か良い方法がありましたら是非情報を事務局にお寄せ下さい。 今回「じゃりみち」号外としてこの文章を発信させていただいたの は、最初に紹介した神戸新聞の記事を読んだ、日々仮設訪問をしてい る私達ボランティアは大変なショックを受けたからです。 たしかにボランティア側の不完全さもあったかもしれません。しか し、この記事のように警察・行政・保健所のことは一切ふれず、あた かもボランティアの責任のように読みとれるような報道に対して、は っきりと抗議の意志表示をしておく必要があるからです。 私達ボランティア側はこれを機に、冷静に改めて考え直さなければ ならないでしょう。新たに犠牲者を出さない為にも、こんなことでへ こたれずに、粘り強く頑張っていくことの意志表示でもあります。み なさん、こんな時こそお互いに助け合いながら頑張って行きましょう! 仮設住宅支援連絡会 阪神大震災地元NGO救援連絡会議 TEL 078-362-5951 --------------------------------------- みなさん、いかがでしたでしょうか?次に、この仮設住宅支援連絡会 代表の村井清雅さんに、今回の仮設住宅での孤独死について伺ったとこ ろ、コメントをいただきましたので、インタビュー形式で皆様にご紹介 致します。 --------------------------------------- ボランティアとは? 仮設住宅の開けることのできない「扉」を考える 仮設住宅支援連絡会 代表 村井 雅清さん >神戸新聞の記事を読んでどう思われますか? 見出しの「ボランティア分からず」ということで、ボランティアに全て の責任があるという受け取られ方をされるのが問題だ。 >ボランティアがどれだけ仮設住宅のケアを出来るのか? ボランティアがどこまで出来るのかというよりも、どこまでやらなけれ ばいけないか?何をやらなければいけないかというのがを考えるべきであ ろう。そのためにはボランティアという「枠」を越えていく、つまり、従 来の「ボランティア」に対する考え方に、一歩踏み込んでいかなければい けない。 >ボランティアの「枠」と言いますが、それは何でしょうか? 「やりたいときにやる、やりたくなかったらやらない」、要するに、 「全て自発的に自由意志で参加できる」というボランティアの特徴が壁に なっていて、例えば行政と一緒になってやろうと言っても、行政はそんな ボランティアに一緒にやろうとは言えない現状がある。だから、もっとあ る種の責任・問題意識を持ったないといけない。すると、それはもう従来 の「ボランティア」の概念を越えてしまう。 >そういった責任感・問題意識を持つボランティアとして、どこまでやら ねばならないのでしょうか? 地域福祉を作っていく上で、地元の方々と一緒になって、積極的かつ主 体的に参加していく必要がある。そこで、地元のボランティアと後方支援 のボランティアとでは、意味あいが変わってくる。やはり、地元のボラン ティアが担うべきで、その地元のボランティアが担うことの出来る土俵ベ ース、担いやすいベースを後方支援のボランティアが作るのが望ましい。 そういう関係を作っていくのが必要だと思う。 >今回の仮設住宅での孤独死が、ボランティアのあり方に提起している問 題は何でしょうか? 従来のボランティアの枠であれば、いくら頑張ったって今回のような 「死者」を未然に防ぐことは出来ない。従来のやり方がダメだとは言い切 れないが、もうちょっと考えなければならないのではないかと思う。号外 にも書いたが、仮設住宅を何回訪問しても会えないということがポイント で、要ケアであると思う。この、何回訪問しても扉を開けることが出来な いという現状を変えなければいけない。 >具体的なイメージは? 仮設住宅の管理は、住宅供給公社というところがしていて、福祉事務所 がしているわけではない。だから、この住宅供給公社が仮設住宅の鍵渡し をしている。だが、この鍵渡しをするまでに、福祉事務所や保健所などと 連携して、仮設住宅に移る方が以前はどうだったのかという情報収集をし ているはずである。だから、「〜にいる〜さんは、身内が〜にいて、仮設 住宅に入るまでにどのような健康状況だったか」ということなども情報と して分かっている。プライバシーの問題があるのはよく分かるが、それは プライバシーに差し支えのない程度で、ボランティアに提供すべきである。 そうすることによって、ボランティアが仮設住宅の扉を直接「開けなくて も」、身内の人たちに来てもらって「開ける」ことや、場合によっては、 身内の人が住宅供給公社に「開けてくれていいですよ」と言って頂ければ、 ボランティアが扉を「開ける」ことが出来る。それ以外は誰も扉を開ける ことが出来ない。不法侵入になるから・・・。このプライバシーと不法侵 入がネックになっている。それをいいことに、行政の方も正直言って今ま でそれほど努力してきていないのではないかと思う。 一方で、各区役所の中には、消防署・警察署・保健所・福祉事務所のレ ベルのすり合わせというか情報交換を次第に行ってきていて、同じテーブ ルにつこうとしている。それをもうちょっと、ボランティアにも共有して、 「死亡者を出さないために一緒にやっていきましょう」という話し合いが あってもいいのではないかと思う。しかし、いつも壁になるのは、「プラ イバシーがあるから出せない」ということである。確かに、ボランティア 団体にもいろいろあって、悪用されないとも言えない状況があるが、そう いう不安・心配を持たせないためにも、ボランティアはボランティアでレ ベルを上げなければいけない。今まで言われてきている「ボランタリズム」 の精神を越えずにそのレベルを上げることが出来たら最高だと思う。 >最後に、これだけは言っておきたいことは? 「ボランティア元年」と言われてきたけれども、そういったメディアの 操作に振り回されて来ている気がする。だから、ボランティアが一時降っ てわいたようにドーッと来たけれども、こんなに急速に神戸を去っていっ たというのは、そこにあるような気がする。だから、メディアに振り回さ れたりしないような、ボランティアが望まれると思う。 −記録室からの声− ■■記録室の近況と、今後の活動計画■■ 前号でお知らせしたように、記録室は9月7日を以て阪神大震災地元N GO救援連絡会議より独立しました。今週には残ったキャビネ等の引っ越 しも済み、スタッフ一同、新しい事務所で心機一転、長かった停滞を取り 戻そうと決意を新たにしています。 新しい組織の立ち上げにともなう様々な事務をこなしながら、これから 記録室はどのような活動をし、何を作り上げてゆこうとするのか、そのビ ジョンを明確にし、具体的な活動を組織する作業に、いま改めて取り組ん でいます。 ■「現在進行中の作業」は次の通りです。 1.収集した資料の管理・再点検と「カルテ」作り ・オリジナルは「震災文庫」(10月公開予定)に入れるため、神戸大学 附属図書館へ近々移しますが、記録室として、今後の分析・検討作業のた めにコピーを取り(その枚数が、約1万枚)、記録室事務所に保管します。 その際、資料のナンバリングと再点検を行っていますが、その過程で、プ ライバシー保護の観点から「公開の基準」を検討したり、集めなければな らない資料の発見も多く、作業はなかなか捗りません。 ・前項に関連して、特に「ミニコミ紙」を取り上げて、発行状況の把握と バックナンバーの収集に努めています。 ・上の点検作業と並行して、必要な情報の整理と共有のために、各団体に ついて「カルテ」(元帳のようなもの)を作成しています。これをもとに、 「阪神淡路大震災・ボランティアダイレクトリ」のようなものを作ろうと しています。 ・いずれの作業も膨大な事務量で、もっと多くの人手と組織化を必要とし ています。 2.「外回り」 ・活動中のボランティア団体のところへ伺って、現在の活動に関する取材 や情報交換、「記録」にまつわる情報や資料の収集、そのほか各種の情報 交換を行っています。 ・過去に活動した団体・個人へもお邪魔し、インタビュー等により、活動 の記録を伝える。 ・これについても、回るべき団体・個人は多く、上記1.同様、人手が不 足しています。 3.「記録室通信」の発行 ・上の2つの作業から得られた貴重な情報を、現地・被災地外双方の関心 ある人々に提供するため、毎週主にファクスとパソコン通信により発信し ています(現在159件+ネット上での発信)。 4.関係他団体との連携 ・現在、震災の「記録」は大きな潮流であり、多くの団体・個人が近いテ ーマで活動しています。「収集し、残し、伝える」べき記録はあまりに膨 大・多様であり、より広がりのある社会的共同作業にしてゆかなくてはな りません。関係諸団体と上手に「棲み分け」、記録室ならではの特色ある 活動をしてゆくためにも、記録室では、関心ある皆様と積極的に情報交換 をしてゆきたいと考えています。 *前号でご紹介した「関係・協力団体」に、重大な漏れがありました。 ここに深くお詫びするとともに、訂正いたします。 「関係・協力団体」(追加) 「現地で働く人を支援する関西市民の会」 ・佐々木 康哲 Tel:06-395-2641 ・平野 慶次 Tel:075-464-6680 ■今後の活動計画 今後記録室は、以下の作業に重点的に力を注いでゆきます。 ・「外回り」 →より広範な資料・記録の収集と、情報交換 ・収集した資料の点検・管理と、情報の整理 ・「カルテ」の整備 〜「阪神淡路大震災・ボランティアダイレクトリ」の作成 ・「記録室通信」の充実と継続的発行 →今後より一層、掲載すべき情報の種類・内容につき吟味し、 真に「双方向」のメディアを目指す。 ・関連団体とのより広範・緊密な連携 ■ボランティア募集■ 記録室ではボランティアを募集しています。上記の作業のいずれについ ても人手が不足しており、人員の拡充が急務です。「記録を残す」作業に 関心のある方はどなたでも大歓迎ですが、とりわけ、 ・ボランティア経験のある人 ・社会学、心理学、経済学そのほか様々な観点から、集められ残さ れた「記録」に関心のある方 ・パソコン経験者 などを必要としています。興味をお持ちの方は、お気軽に「震災・活動記 録室」までご連絡ください。事務所の見学も歓迎です。ぜひ一度私たちの 作業の様子を見に来てください。 ■資金協力のお願い■ 記録室では各種助成金や寄付などをいただいて活動の資金にしています が、絶対量が不足しています。この作業に関心のある方のご支援を、心よ りお願い申しあげます。 <口座> 名義:「震災・活動記録室 代表 実吉 威」 ・郵便振替口座 「01180−5−67581」 ・三和銀行三宮支店 「3984821」(普通預金) ――記―― 1.独立にあたって、阪神大震災地元NGO救援連絡会議からは机、キャビ ネ、取材用テレコ等の機材を貸与いただくとともに、相当額の財政支援も いただきました。ここにその旨を記すとともに、感謝の意を表します。 2.「記録室」新事務所に新しい電話回線が開設されます。番号は、 078−272−6676 で、9月22から使用可能で、FAXは、当面いままで通り 078−221−3035 です。 −お詫びと訂正− 第9号で、「震災・活動記録室」の新住所をお知らせしましたが、電話 番号にミスがありました。このために皆様に大変ご迷惑をおかけしました。 この場をお借りしてお詫び致します。 正しい電話番号は 078-242-3047(仮) です (078-241-3047は間違いです)。 「震災・活動記録室」では、震災後のボランティア活動に関する資料 (活動記録・日誌・写真・ビデオ等)を集めております。これら貴重な 記録を後世に残すためにも、皆様のご協力、宜しくお願い致します。 また、「記録室通信」への投稿も受け付けております。ご意見・イン フォメーションなどありましたら、ご連絡下さい。 ******************************************************** 震災・活動記録室 〒650 神戸市中央区御幸通2-1-6 芙蓉三宮ビル5F Tel. 078-241-3047 (仮) Fax. 078-221-3035(仮) Nifty-Serve:PXE03224 *Internetに関しては現在、準備中です。 ********************************************************