Return-Path: owner-vag@oskgate0.mei.co.jp Date: Mon, 2 Oct 1995 15:03:56 -0900 From: funaken@ccs94.cla.kobe-u.ac.jp (Takeo Funahashi) Subject: [VAG 40] [Kirokushitsu Tsuushin] No.11 舟橋@震災・活動記録室 です。 記録室通信第11号をお送りいたします。いつもMLに垂れ流している状態で、 興味のない方には多大なるご迷惑をおかけしていると思います。申し訳あり ません。 近いうちに、記録室通信専用のメーリングリストをたち上げたいと思ってお りますので、記録室の活動及び、記録室通信の内容にご興味のある方はよろ しくお願いいたします。 では、第11号をお送りいたします。 --------------------------------------------------------------------- ##################### 記録室通信(Renewal) 30-Sept-1995 第11号 ##################### Quake Chronicle Project 震災・活動記録室 −はじめに− 皆様、いかがお過ごしでしょうか?「震災・活動記録室」です。秋の気配 も深まり、過ごしやすい季節となってきましたが、記録室のメンバーも、こ の時期にしっかりと頑張っていこうと思っております。皆様も、この季節の 変わり目に体調を崩されないよう、ご自愛下さい。 それでは第11号をお送り致します。今後とも、よろしくお願いいたします。 (「記録室通信」担当:舟橋 健雄) −記録室通信とは− 記録室では震災後のボランティア活動の記録を残すことを目的として、ア ンケート調査、インタビュー取材などを中心に活動してきました。同時に各 団体から活動の資料を提供していただき、目録を作成して将来公開するため の準備を進めています。そして、活動の中で出会ってきた皆さんとの情報交 換の場として、また新たな出会いの場として、毎週「記録室通信」を発行し ています。被災地での最新情報、全国のボランティアの動き、支援活動でつ かんだノウハウの紹介等の発信を考えています。 −現地からの最新情報− 【孤独死とボランティア】 前回からテーマになっている、仮設住宅での孤独死を引き続き考えてみた いと思います。 前回の記録室通信から2週間経った現在までに、また2件の孤独死がありま した。以下は新聞記事からの引用です。皆さんのご意見をお寄せ下さい。 『発信機 間に合わず:神戸の仮設 女性孤独死 受話器握ったまま』 28日午前2時45分ごろ、神戸市東灘区住吉宮町三丁目の住吉公園仮設住宅で、 独りで暮らしている村上美代子さん(70)の様子がおかしいと、被災者支援の ボランティア団体から、119番通報があった。救急隊員が駆けつけたところ、 村上さんは仮設住宅の自宅で受話器を握ったままうずくまっていた。すぐに 近くの病院に運んだが、約一時間半後に死亡した。 東灘署の調べによると、村上さんは、神戸市灘区徳井町のボランティア団 体「神戸元気村」が、体調が悪くなった場合などの非常時に連絡が取れるよ う無料で配布したペンダント型の小型発信機を鳴らした。事務所で信号を受 信したボランティア団体のメンバーが、村上さん宅に電話で折り返し連絡し たところ「胸が苦しい」と言ったまま電話が途切れたという。 村上さんは、東灘区御影塚町四丁目の自宅が阪神大震災で全壊し、住吉公 園仮設住宅に移った。高血圧とぜんそくで、通院し治療中だったという。 (朝日新聞 28日夕刊より) 『50代男性また孤独死:神戸の仮設 支援の"死角"発見遅れ』 26日午後、神戸市西区の大規模仮設住宅で、男性が死後4日たって見つかっ た。この住宅では、今月になって二人目の孤独死。 同日正午ごろ、同区平野町向井の仮設西神第7住宅で、一人暮らしの男性 (55)が死亡しているのを同住宅の自治会役員が見つけた。 神戸西署の調べによると、おう吐物で窒息し、22日午前二時ごろに亡くな ったとみられる。22日付の朝刊から新聞がたまっているのを訪ねたボランテ ィアが不審に思い、自治会役員に知らせた。入居申込書によると、男性は兵 庫区で被災した後、六月に同住宅に入居。亡くなる直前まで病院に通ってい た。 同住宅は、六月の開設。1060戸が建設され、現在986世帯の入居が確認され ている。今月13日にも、病死して二ヶ月たった56歳の男性が発見されている。 同住宅で五十代男性の孤独死が相次いだことについて、神戸市の西区災害 対策本部は「ボランティアや職員らは障害者や65歳以上の高齢者らを中心に 支援活動を行っているため、残念ながら発見が遅れたと思う。戸数も多く、 どうしたらよいのかあらためて対策を考えたい」としている。 (神戸新聞 27日朝刊より) −ひと<人>こと− 【女性支援ネットワーク代表 正井礼子さん(46)】 1991年から神戸で「ウィメンズネットこうべ」という女性を支援する活動 を続けてきた正井さんに、震災後全国の仲間から何か出来ることはないかと の問い合わせが殺到しました。3月に入り「女性支援ネットワーク」を立ち上 げ、電話相談、避難所に洗濯機や自転車を贈る運動などを行ってきました。 ボランティアで被災地を走り廻っている間に、神戸市の長年の街づくりの 欠陥がこの震災で噴出したこと、大災害の時は、障害者やお年寄り、子供、 女性と弱い立場の人がより大きな被害を受けているという現実に直面しまし た。くらしに深くかかわっている女性の声を市政に反映させていかなければ、 神戸の復興はないという危機感から、6月の神戸市議会選挙に須磨区から立候 補。1ケ月という短い選挙運動と政令都市の厚い壁にぶつかり、惜しくも次点 で終わりました。 正井さんが目下最も気になっているのは、震災後様々な性暴力が行われ、 被害にあった女性や子供が深く傷ついた心を癒す場がないということです。 また、家や仕事をうばわれ生活が苦しくなっている現在、夫が妻に暴力をふ るったり、母親が子供を虐待するという話も増えているという声も聞きます。 これからは女性を支援する立場で様々な活動を模索中とか。活動していく 中で理不尽にぶつかって感じる怒りをエネルギーに、これからも息の長い活 躍を期待しています。 (取材担当:季村 範江) ☆女性支援ネットワークの活動☆ ・女性のための電話相談 毎週 火・金曜日 10時〜16時 TEL..078-734-1944 ・火曜日 パートナーとの関係に悩んでいる人 金曜日 被害で心や体のしんどい人 のための自助グループも計画中です。 「気軽にご相談下さい。悩んでいる人もお茶を飲みにおいで下さい」 とのことです。 事務所:山陽電鉄須磨駅西隣 *夜間の電話相談(18時〜20時)も受け付けたいので、 お手伝いして下さる方、ご連絡下さい。 〜 記録室ボランティア募集 〜 記録室ではボランティアを募集しています。記録を残すことに関して、様 々な作業があるのですが、いずれも人手が不足しており、人員の拡充が急務 となっています。 特に、 ・フィールドワークに興味がある人 ・ボランティア経験のある人 ・社会学、心理学、経済学そのほか様々な観点から、集められ残さ れた「記録」に関心のある人 ・パソコンの使える人、あるいは使ってみたいと思う人 などを必要としていますが、「記録を残す」作業に関心のある方はどなたで も大歓迎です!! 興味をお持ちの方は、お気軽に「震災・活動 記録室」までご連絡ください。 事務所の見学も歓迎です。ぜひ一度私たちの作業の様子を見に来てください。 開室時間:月〜土 午前9:30〜午後5:30 担当:実吉・舟橋 −震災関連書籍の紹介− 今回は、「愛ちゃんのボランティア日記」という本をご紹介致します。 「愛ちゃんのボランティア日記」は、神戸YWCAでボランティア活動をされて いた"たけしまさよ"さんが、活動を通して感じたこと・気づいたこと等をマ ンガにまとめたものです。9月にアース出版局から出版され、23日に出版記念 パーティーが開かれました。 「座る」「用をたす。小はそのまま」「大の場合は新聞に包み、黒いビニ ール袋へ」「ふいた紙は青いビニール袋へ捨てる」「流さず出る」「手は消 毒液にひたし」「バケツの水ですすぐ」「ティッシュでふく」「おわり」 愛ちゃんは、神戸のボランティア先で、このようにトイレを済ませていた。 現地でボランティアなさっていた皆さんはどうしましたか?遠方で見守っ て下さっていた皆さん、これが1月17日以降の神戸の実情だったんですよ。 「愛ちゃんのボランティア神戸日記」は実際現場でボランティアをしてい なければ決して分からない話でいっぱいだ。愛ちゃんの目を通して現場を見、 人と出会う。そこで愛ちゃんは決して「ボランティアは◯◯であるべきだ。」 と言わない。「今のこのような問題が定義されている」とも言わない。何気 なく被災者の方々と話をし、神戸を歩き回り、他のボランティア仲間と仕事 をする。 しかし愛ちゃんのまなざしは、そのエピソードの間に見え隠れする問題点 を見落とさない。愛ちゃんの訪問先に元気なお父さんがいた。ノコギリを持 ち、笑いながら愛ちゃんと話をする。 「階段も落っこったけど、ワシが皆なおしたんやで」そして愛ちゃんは次の 訪問先へ向かう。 「また来てな」。笑いながら見送るお父さん。しかし愛ちゃんはお父さんの 心の奥を見落とさない。”お父さんはこわれた家を直し続ける 元気でなけ れば生きていけない”話はこう締めくくられている。 「ボランティアは◯◯であるべきだ」「今被災者はこのような環境におか れています」。こう言うのは簡単だ。しかしその言葉の奥に現地で頑張って いる人々の顔が見えなければ、講演会の台上に立つ為に訴える内容を考える 先生方と大して変わらない。しかし、この本は愛ちゃんのまなざしを通して 描かれたエピソードを全面に押し出すことで、かえって被災地の問題点を浮 き彫りにし、説得力を持たせているように思う。 現地でボランティアをしていた方々には、思わずふき出してしまうような エピソードも盛りだくさん。是非お推めしたい一冊だ。 (森朋枝) −記録室資料の紹介− “震災時の「健康法」” 阪神大震災後の猛烈な寒さ、蓄積する疲労、ストレスは、被災した人々に も、ボランティアにも、大きな困難をもたらしました。今回紹介する資料は、 疲れや寒さを癒すための、「健康法マニュアル」とでも言えるでしょうか。 【「だれでもできる”足湯”講座」ライフ・ウォッチ・ネットワーク】 「足湯」とは、塩と漢方薬を溶かしたお湯で、足を洗い、マッサージする こと。兵庫区、長田区を中心に、ボランティアで足湯 を行った皆さんが、 誰にでもできるよう、簡潔にマニュアルをまとめました。その一部をご紹介 します。 材料:水・塩・漢方薬(べに花、みかんの皮、よもぎ、大根葉、はっか、 センキュウ、ウイキョウなど) 道具:湯沸かし用品、なべ、洗面器、タオル、バケツなど。洗面器はく るぶしまでつけられる大きめのもの 1:なべに水、塩、薬剤をいれ、沸騰してから4、5分煮出す。水5リ ットルに塩ひとつまみが目安 2:煮汁を掌がつけられるくらいの温度にまでさし水し、洗面器に移す。 片足ずつ、足湯マッサージをする。 ・足の指一本ずつ揉んであげましょう ・足の甲は骨に沿ってさすってあげる ・足の裏はよく押してあげる ・足首は指圧してあげると気持ちいい 秘訣:「自分がやってもらうと気持ちいい事をしてあげる」 【「阪神大震災被災者のための気功健康体操」関西気功協会】 「気功健康体操」は、体のこわばりをほぐし疲れを取る体操。初めての人 でも簡単にできるよう、絵入りのパンフレットになっ ています。寒さや風邪などに対処して、使い捨てカイロを効果的に使う方 法も載っています。こちらもご紹介するのはほんの一部です。 「だるまさん」 あぐらをかいても足を投げ出しても椅子にかけてもいい ので、とにかく座って、背筋をまっすぐにします。 両手を膝において、上体をゆったりと左右にゆらしていきます。メトロノ ームのような動きです。首の力も抜いて、風に吹かれる葦のようにゆらゆら とゆれます。脳を休めるのが狙いなので、あまり大きな動きにはしません。 次に前後にゆすります。眠くて「舟をこぐ」ような動きで、首の力を抜い てやります。さらに右廻しをしばらくやり、また左廻しをします。なれ てきたら自由に動いて背中をすっかりほぐします。 [効果]肩、背中、腰をほぐし、背骨のゆがみを除き、心身をリラックス させ、脳を深く休めます。寝る前に特に効果的です。 どちらのマニュアルも、もっとたくさんの記事があるのですが、枚数の関 係で、本当にわずかなことしかお伝えできません。申し訳ありません。 これらの活動に共通しているのは、体をケアすることが心のケアにもつな がるのだ、という姿勢のように思います。伝統の中で培われてきた知恵、日 頃の生活の中でも実践できるようなこと、それが、緊急時でも一番役に立つ のかもしれません。 (八ツ塚 一郎) ******************************************************** 舟橋 健雄 Takeo Funahashi 震災・活動記録室 副代表 神戸大学総合ボランティアセンター 情報通信担当 Tel. 030-865-4643 Fax. 078-593-6802(Tel/Fax兼) Nifty:PXE03224 Internet:funaken@kobe-u.ac.jp ********************************************************