最初の何章かは従軍慰安婦問題,東京裁判の問題など,すでにほかの論者によってさんざん書かれている内容である. そのなかには 「選挙コンプレックスがニクソンの生命取りになった」 (p. 113) というような,おもしろい話がちりばめてあったりはするものの,あまり新鮮さは感じられなかった. 3 章からは日本資本主義の分析など,小室らしい話題が登場するが,私にとってもっともインパクトがあったのは第 4 章 「なぜ,天皇は 「神」 となったのか」 である. 最近は教育勅語が現在でも有効な常識的な内容だとする意見が多くなっているが,小室によれば教育勅語はキリストのような現人神である天皇が儒教にはないまったく新しい規範を説いたものであるという. これぞ小室天皇教の真髄であり,逆にいえば教育勅語の “復活” に注意が必要だということでもある.
評価: ★★★★☆
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キーワード: 小室直樹, 日本資本主義, 天皇教, 教育勅語