シェーンベルクの 12 音音楽はきいておもしろいものでないという意見をもっているひとがおおい. しかし,私は,それはきいておもしろくなるまで,くりかえしきかなかったからだとおもいます. 難解な音楽というのはほかにもありますが,シェーンベルクの音楽はそのなかでもとびきりのものです. アヴァンギャルドの音楽をさまざまきいているひとでも,シェーンベルクを一度で理解するというわけにはなかなかいかないのではないかとおもいます.
何回かきいているうちになにが変化するのか,私にもよくわかりません. 私のばあい,その変化は中学生のころにおこったので,いまや,おもいだすことができません. しかし,シェーンベルクのたいていの音楽はこのカベをこえると魅力的になるのです. やはり,聞き手のなかで,なにか一種の “常識” あるいは “くせ” が破壊されているのではないかとおもえます. 私がもっともすきなシェーンベルクの曲は弦楽三重奏曲,ピアノ協奏曲,オーケストラの変奏曲などであり,これらはいずれも 12 音の作品です. 調性時代の室内交響曲第 1 番や無調時代のオーケストラのための 5 つの商品などもすきですが,12 音の曲のほうがおおいので,すきな曲のなかには 12 音のほうがおおいのです.
ただし,シェーンベルクの 「実験」 のなかには成功していないものもあるとおもいます. 室内交響曲第 1 番も 4 度の上昇をくりかえすモティーフを使用した実験的な作品ですがこれは成功しているとおもいます. それに対して 12 音の時代に書かれた,第 1 番よりもっと調性的な第 2 番には,平均律においてもっともはなれた調に急に転調する部分があって,ここには無理があるとおもいます. 最初はなにがおこったのか,わかりませんでした. 何回かきいているうちに,きいている私が転調先の調を先に準備するようになりました. そうしないと理解できないのです. こういう極端なばあいもありますが,これ以外の曲は何回かくりかえしきいているうちに,このような不自然なことをしなくても理解できるようになるとおもえるのです.
中学 3 年のときに買ったシェーンベルク全集の最初の 1 巻
2011-7-27 追記:
上記のとおなじ第 7 巻がいまは CD になっています.
Amazon{.co.jp, .com} でみても,一部の巻しかみつかりません.
2007-11-23 追記:
念のために書いておきますが,くりかえしきくとわかるようになるというのは,音列がどのようにつかわれているかがわかるようになるという意味ではありません.
ただの 「音響」 ではなくて 「音楽」 にきこえるようになるということであって,たぶん,よほど耳のいい (?) ひとでなければ,セレナーデのようなわかりやすい曲でなければ,くりかえしきいても音列が把握できるようにはならないでしょう.
しかし,それは問題ではないのです.
ディスコグラフィ (2009-9-28 追記)
- シェーンベルク : 室内交響曲第 1番 / 6 つの管弦楽伴奏付歌曲 他
- 新ウィーン楽派作品集 (シェーンベルク 室内交響曲 第 1 番,第 2 番 をふくむ)