ソニーのチューナー ST-A4 をずっと使用してきました. 最近は FM 放送をきくことがほとんどないのですが,いつでもつかえる状態にあります. ST-A4 はとくに性能がよいわけでもない安価なチューナーでしたが,おおきな同調ツマミと 2 つのメーターがついたスタイルへのこだわりによって買ったものです.
ST-A4
最近のチューナーでは同調ツマミをつかって放送に手で同調することは,ほぼなくなりましたが,このチューナーを買った 1980 年代のはじめは,まだこういうアナログの同調方式がつかわれていました. シグナル・メーターとチューニング・メーターをみながらツマミをまわして,最適な位置をさがします. 当時でも安価なチューナーにはメーターが 1 個しかついていないものがおおかったなかで,このチューナーを選択しました.
自動で最適な位置をさがす最近のチューナーではこのような手間は必要ないのですが,アナログ・チューニングにもよさがあります. 最適な位置をメーターだけでなく音をききながらたしかめることに,ひとつのたのしみがありました. また,ときには不快な局間ノイズをきくことも,たのしみのひとつということができます. ボタンをおして選局する方式は 「点」 の経験しかできませんが,アナログ選局は 「線」 の経験だということができます. 「線」 のうえを移動することで放送局との 「距離」,あるいは放送局間の 「距離」 を感じることができます. アナログの記録手段である LP レコードがみなおされていますが,アナログ・チューニングにもアナログ・オーディオのたのしみがあります. また,このような 「線」 や 「面」 あるいは 「アナログ」 へのこだわりは,私の仕事 (研究) のなかでも 「デジタルとアナログの融合」 に書いたようなかたちでいかされているようにおもいます.