20 世紀には 「言語学的転回」 がおこったのに対して 21 世紀には 「情報学的転回」 がおこると著者はいう. そして,情報学的転回とは人間がコンピュータの奴隷になることへの異議申し立てにほかならないという. これは直観的には納得のいく話である. しかし,著者はこの転回のもととなる IT (情報技術) をユダヤ=キリスト教とむすびつけて,その転回 (ユダヤ=キリスト教の相対化) を議論している. 日本人が IT で欧米ほどの成果があげられない原因も日本にこの一神教がないことにもとめている. キリスト教と資本主義との関係はしばしば指摘されているが,IT との関係を指摘するなら,もっと精密な議論が必要だろう. 現代において情報学転回がもとめられると同時にユダヤ=キリスト教からの転回ももとめられているかもしれないが,本書で論じられているようにオートポイエーシスを媒介としても,私にはこの 2 つがむすびつけられない.
評価: ★★★☆☆
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