産経新聞は紙の新聞のイメージをそのままオンライン化した 「産経 NetView」 というサービスをしています. 紙で購読すれば月額 2950 円であるのに対してオンライン版は月額 315 円であり,はるかに安価に読むことができます. こんなサービスはうまくいくはずがないというひともいますが,私自身はけっこう気にいっています.
佐々木 俊尚 は 「ジャーナリストの視点」 というブログのなかでつぎのように書いています (「これを読めばすべてわかるっていうブログはないんか?」 (2006 年 8 月)).
冷静に考えれば,産経 NetView の失敗理由は明らかだ. 新聞という紙のメディアが好きな中高年は,わざわざ紙のメディアをパソコン画面で見たいとは思わないし,30 代前半以下のネットの世代にとっては,新聞の記事なんていうのは新聞社のサイトでマイクロコンテンツ化されたものを読めばいいわけであって,わざわざ紙のイメージのものを読むメリットはまったく感じていない. つまりは NetView は明らかにマーケティングに失敗しているというか,いったいどのような読者を想定したのかさっぱりわからないサービスだったのだ.
平均的な日本人のかんがえかたは,あるいは佐々木が書いているとおりなのかもしれません. しかし,紙の新聞のレイアウトはながい時間をかけてくふうされてきたものであり,仮に Web 上ですべての記事が読めるとしても,「産経 NetView」 には利点があるとおもいます. つまり,記事のおかれているページやページ内での場所,見出しのおおきさやフォント,記事全体の面積などが,その記事に対する新聞社の見識や姿勢などをあらわしています. その一部は Web 上でも表現されているでしょうが,いまのところ,とくに日本の新聞社のホームページのレイアウトはまったく洗練されていません (もっとも,逆に紙面ではちいさなあつかいしかうけていないために見過ごしてしまいがちな記事がオンラインでは目にとまるということもありますが). 一方,New York Times, Washington Post など,アメリカの新聞社では Web 上ではもっとフォント・サイズやレイアウトをくふうしていますし,逆に紙の紙面のレイアウトは日本の新聞ほど複雑でないので,両者が比較的ちかいようにおもわれます.
紙にレイアウトするのがよいのなら産経新聞を紙で読めばよいわけですが,私がそうしていないのは,以前から購読している朝日新聞をやめたくないからです. 2 紙をともに紙で購読するのは紙のむだです.
「産経 NetView」 の契約者は佐々木によると数 1000 人しかいないということです. 日本の新聞社がいつまで紙の新聞をつくりつづけることができるのかはわかりませんが,オンライン化するとフォントやレイアウトの情報がきえてしまうとしたら,すこしさびしいようにおもいます.
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