Linden Lab (リンデン・ラボ) の Second Life (セカンドライフ) に関して,しばしば 「閑散としている」 といわれます (たとえば濱野 智史 の 「情報環境研究ノート」 (第10回 セカンドライフが 「閑散としている」 のはなぜか? 3)). 「新 清士 のゲームスクランブル」 (ディズニーランドにはなれない 「セカンドライフ」 (2007-8-3)) によると,Second Life にログインするひとのおおくは新規ユーザであり,ほとんどのユーザは 1 回しかつかわずに放棄してしまうということです. 新が書いているようにログインしても閑散としているからインタラクションは成立しにくいわけですが,さらに,こういうユーザはひやかしでつかっているわけですから,だれかと出会ってもインタラクションしない可能性がたかいのではないでしょうか?
この記事を書くにあたって,確認のために Second Life をつかってみようとおもいました. そこで,すぐに登録して,日本語β版のプログラムをダウンロードしました. ところが,家にあるパソコンのうち 2 台でためして,いずれもビデオカードのドライバが適合しないということで,起動しませんでした. 新は 「新規ユーザーは最低でも必ず 1 回はアクセスするわけだから」 と書いていますが,実は 1 回もアクセスできずに断念している私のようなユーザもおおいのではないでしょうか? Second Life では高度なグラフィクス機能をつかおうとしているため,このようなことがおこるのでしょうが,ありふれた PC でうごかないようでは,ひろく普及させることはできません.
そういうわけで私自身はいまだに Second Life をつかえずにいますが,ほかの仮想世界なら体験したことがあります. DiPaola らによる DigitalSpace Traveler (DST) というシステムです. DST の前身は OnLive! Traveler とよばれ,BIGLOBE においてもサービスされたことがあるということです. 私は DST をためしにつかってみました. これは日本語がつかえるシステムではないので,英語でガンガンはなしかけられたらどうしようとおもいつつ,はいっていきました. ここもやはり閑散としてはいましたが,ひとりのアバターに,であいました. インタラクションをこころみましたが,失敗しました. DST は文字によるチャットではなく音声をつかうので,音声がうまくつたわらずにインタラクションに失敗する可能性が文字のばあいよりおおきいとおもわれます. したがって,失敗の原因が技術的なものなのか,相手がインタラクションをのぞまなかったためなのかはわかりませんが,とにかく唯一可能性があったインタラクションにも失敗してしまって,つまらないのですぐやめました. おなじことが Second Life でもおこっているのではないかと想像されます.
追記 (2007-10-27):
佐々木 俊尚 の 「ネット未来地図」 (文春新書) という本でも,セカンドライフが閑散としていてつまらないこと,「日本で普及しているパソコンの大半はセカンドライフが満足に動作しない」 ことを指摘しています.
さらに,現代においては Twitter のような [ニコニコ動画のような] 非同期コミュニケーションがもとめられているのに対して,セカンドライフは空間と時間を共有する同期コミュニケーションを必要としていて,それは 「進化の道筋に逆行したサービスである」 と指摘しています.
進化に逆行しているという意見にただちに賛成することはできませんが,きくべき指摘だとおもいます.
2008-4-19 追記:
「 だれもいない「Second Life」 ― 仮想世界を生かしきれない企業の実態」 は Second Life のビジネス的な価値を検証しようとしていますが,ここでもそれが閑散としていることが,くりかえし書かれいます.