「情報とコミュニケーションにおける非日常性 == イベント」 にも書いたように,Web は基本的にはデータベースのようなものです. つまり,Web 上の情報はいつでもみることができる,非イベント的なものです. しかし,ネット・オークションはそれとは決定的にちがう性質をもっています.
ネット・オークションで重要なのは,オークションにかけられた品物をだれがいくらで落札するかです. しめきりがちかづくと,つぎつぎにビッドするひとがあらわれます. そのたびに値段が更新されます. そして,終了時刻がくると,最高値をつけたひとが落札します. つまり,ネット・オークションは時刻がきめられたイベントです. オークションへの参加者はそれを共体験します. ひとつの品物は基本的に 1 回だけオークションにかけられますが,ビッダーズ,ヤフー・オークションなどの “ネット・オークション会場” ではいつもオークションがおこなわれています. したがって,特定の品物がほしいひとにとっては特定のオークションに非日常性をみるでしょうが,オークション全体としては日常的です.
ネット・オークションは通常の Web のしくみをつかって実現されています. 「情報とコミュニケーションにおける非日常性 == イベント」 に書いたように,Web のしくみはおおくのひとがイベントを共体験するのにはむいていませんが,ネット・オークションにおいてはそれが可能になっているのは,通常,ひとつのオークションへの参加者はそれほどおおくないからです. ひとつのネット・オークション会場では多数のオークションが同時にひらかれていますが,それらは基本的に独立なので,必要に応じて複数のサーバに分散させることができます. ひとつのオークションを複数のサーバに分散させるのは困難ですが,参加者数がかぎられていれば,ひとつのサーバで処理することができます.