Web 2.0 的な世界においては,既存の知識を参照して,あたらしい知識をそれにつみかさねたり,それをあたらしい知識に発展させていくことが重要です. 本のように活字であらわされた知識のばあいは,その本のどこに記述されているかをページ数や行数によって指定することができます. テレビ番組のような動画によって表現されている知識においても,その一部を指示したり検索したりする機能を開発する必要があるとかんがえられます.
テキスト検索のばあい,このようなテキストの一部を検索する機能はパッセージ検索とよばれます (「細粒度全文検索法の開発」 (PDF) 参照). したがって,テキストのばあいとは検索のキーなどはちがってくるでしょうが,動画においてもパッセージ検索機能を実現する必要があるということになります.
佐々木 俊尚 は TV2.0への道のりというブログのなかで,つぎのように書いています (番組の検索手法を巡って神経をとがらせる放送局 (2)).
[前略] 番組コンテンツの量がどんどん増え,しかもこれまでの地上波や衛星放送のようなストリーミングだけでなく,オンデマンドでの放送が当たり前になってくると,「どのようにして見たい番組を探し出すか」 が重要なテーマとなってくる. 考えてみれば当たり前だが,番組表だけでは対応できなくなるからだ.
さらに言えば,番組コンテンツのマイクロコンテンツ化ということもある. テキストの世界では,パッケージメディアからマイクロコンテンツへ移行するという激変が起きた. かつてのようにパッケージとして新聞,雑誌を読むのではなく,新聞や雑誌に含まれている一本一本の記事を選択し,その記事だけを読むというのが Web の世界では当たり前になった. つまりマイクロコンテンツ化である. おそらく動画に関しても,同じようなマイクロコンテンツ化が劇的に今後は進んでいく ―― つまり番組をひとつのパッケージとして見るだけでなく,その番組に含まれている特定のシーンだけを抽出して見るという視聴スタイルの登場である.
ここでは検索についてはのべていませんが,Google によってテキストの内容が検索できることと対応させれば,当然,必要な機能だということになるでしょう. しかし,Web でもトップ・ページ以外へのリンクを禁止しているサイトがあるように,放送事業者は番組を途中だけみることを禁止したいとかんがえているようです. 佐々木も言及しているように,西 正 は 「サーバ型放送 ~ 異なる NHK と地上波民放の思惑」 のなかでつぎのように書いています.
NHK,民放によらず,放送事業者の立場からすると,“勝手メタデータ” が横行することは困るので,何らかの形でそれをさせないような仕組みを考えている. 法的に縛りをかけるのか,紳士協定的になるのかは分からないが,勝手メタデータを使って NHK,民放の番組を切り刻めないようなアクセス制御を技術的にかける方向で検討が進められている.
しかし,もし番組の途中の情報がほしいだけなのに先頭からみなければならないとしたら,Web サイトをトップページからみなければならないこと以上にストレスがたまる,あるいはたえられないというべきでしょう.