ニコニコ動画においては複数のコメントが巧妙なアルゴリズムによって表示され,それが人気のもとになっているとかんがえられます. しかし,そこにはどうも必然性が感じられず,つくりこみすぎているという印象がぬぐえません.
「ニコニコ動画 関係者ブログ」 (「2007年08月16日 12:41」) にはつぎのように書かれています.
コメントを重ねずにできるだけたくさん表示するためにコメントの表示幅と時間軸を XY 軸にみたてた平行四辺形上で幾何学的に衝突判定をするアルゴリズムをつくりました。 表示時間を一定にすることにより、コメントの長さによって流れる速度を変えて、視認性を高めました。 このことは期せずしてコメントアートが成立できた条件をつくりました。 AA を画面に横切らせることができるように複数行の入力に対応しました。 (荒らしに悪用されるので後に廃止) また、字幕をつけたりニュース速報とか、地震速報ごっこができるように画面の上下にコメントを固定表示できる機能もつけました。
また,日経エレクトロニクス 2007.9.24 p. 79 にはつぎのように書かれています.
ドワンゴ dwango.jp 事業本部 第一企画開発セクション セクションマネージャーの中野真氏によれば,ニコニコ動画が動画市長の新たな楽しみを実現できた秘訣は,コメントの流し方の細かなチューニングにあったという. ユーザーの反応を見ながら,コメントの長さや数に応じて,コメントが流れるタイミングや速度を細かく調整した. これにより,大量のコメントを画面上に流せるようになり,これがユーザーの高揚感を引き出した.
古いコメントの色を薄くして徐々にフェードアウトさせることで,コメントの新陳代謝を促している. 「たとえば古いコメントを削除しても,絶妙なコメント,いわゆる 「神コメント」 は他のユーザーが再度投稿してくれるので,徐々にコメントが洗練される」 (ドワンゴの中野氏)
このコメントは開発者ブログのつぎの記述 (「2007年07月21日 13:54」) とつながっているとかんがえられます.
ニコニコ宣言で我々が提起したかった仮説のひとつに、ネット上での人工生命ともいえる集合知は生物のように進化しなければいけないのではないか、というものがあります。
それはひとことでいうと、世代交代です。 完璧な人間の理想像を追求した賢明なエルフを造りあげ、不老不死を目指すのではなく、馬鹿でどうしようもない短命の人間が、同じことを繰り返して世代交代しつづける世界をつくろうとしました。
ですから、ニコニコのコメントはどんどん流れて消え去っていきます。 残したい良質なコメントも荒らしのコメントも時の流れの前には等価です。 同じネタ、同じ突っ込み、同じ荒らしが延々と続いていくのです。 その世代交代を超えて残るものがミームとしてニコニコ動画の文化であり歴史となって残っていけばいいと思っています。
人工生命的なところはおいておくとして,コメントをながすアルゴリズムを選択したり,「チューニング」 したりするところには,いまひとつ必然性が感じられません (あるいは,自分でチューニングしてみれば,納得するのかもしれませんが). 必然性がないチューニングは,やがてあきられてしまう危険があるのではないでしょうか? このようなパラメタをいれずに (ノンパラメトリックにコメントを表示することができないものかとおもいます.
注 (2010-8-12 追記): 写真は借用したものであり,写真からもとのサイトへのリンクがはってあります.