IPv6 (インターネット・プロトコル・バージョン 6) に関係したプロトコルとして “Neighbor Discovery Protocol (NDP)” というのがあります. これを日本語に訳すとき 「近隣探索プロトコル」 と訳しているひとがおおい (WIDE IPv6 WG の訳語としてもこれがつかわれている (2007-12-9 追記)) のですが,“neighbor” を 「近隣」 と訳すのも,“discovery” を 「探索」 と訳すのも,へんだとおもいます. 「近隣者発見プロトコル」 と訳したほうがよいのではないでしょうか? 私は 「近隣者発見プロトコル (Neighbor Discovery Protocol)」 において,そのように訳しました.
“Neighbor” ということばは場所をあらわすことがないわけではないようですが,通常はひとやものをあらわします. したがって,「近隣」 ではなくて 「近隣者」 と訳すほうが適切でしょう.
“Discovery” ということばが通常は 「発見」 と訳されることはだれでも知っています. “Neighbor discovery” においてこれを 「探索」 と訳すべき理由はなんでしょうか? 「探索」 は通常は “search” の訳語としてつかわれます. “Search” に似たことばに “retrieval” がありますが,この語は 「検索」 と訳されます. “Search” も 「検索」 と訳されることがありますが,通常は 「発見」 と訳されることはありません.
もう一度 “neighbor discovery” にもどると,これを 「近隣発見」 と訳すと,ちょっとおちつきません. 「発見」 するのは場所ではなくて,ひとやもののはずだからです. それに対して 「近隣探索」 ということばはおちついています. 場所を 「探索」 するのは自然だからです. 「近隣」 をやめて 「近隣者」 にすれば,「発見」 ということばとうまくくみあわせられます. したがって,“neighbor discovery” は 「近隣者発見」 であるべきだと私はおもいます.