世間では iPod (アイポッド) と iTune (アイチューン) に注目があつまっているが,この,すごくこまぎれで音楽を売買する世界は,どうやら私には無縁の世界である. むしろ,クラシックの世界ではやっている CD 数 10 枚組というまとめ売りの世界のほうが私にはずっと興味がある.
Apple の iTune においては,非常にこまかい単位で音楽を売っている. CD シングルや EP には A 面と B 面があるから,ポッブスでもすくなくとも 2 曲はまとめて売っているが,iTune では 1 曲ずつ,バラ売りしている. この単位は EP 片面にはいらないながさの音楽,とくにクラシック系の音楽にはむいていない. iTune では “アルバム” 単位のまとめ売りもしているが,そうなると CD とくらべて不利な点がめだってくる. すくなくとも私は iTune で音楽を買う気にはならない.
私がきく音楽のおおくは交響曲やその他の管弦楽曲であり,10 数分から 60 分以上のものがおおい. ショパンのピアノ曲集やバッハの平均律クラヴィール曲集のような小品集であれば 1 曲のながさはみじかい. そういう曲は iTune ではばら売りしているが,1 曲ずつばらばらに買うということは私にはかんがえられない.
まとめて買うとなると,iTune でも 1000 円以上になる. CD でも 1000 円以下で買えるものはおおい. iPod のための MPEG4 AAC というフォーマットに圧縮された音楽を 1000 円以上かけて買うよりは,圧縮されていない CD で買ったほうがよいとおもう. 圧縮されていない音を圧縮するのは比較的容易だが,逆変換しても劣化した音はもとにはもどらない. iPod できくには iTune で買うのが便利だろうが,私には iPod できかなければならない理由はない. ノイズリダクション・ヘッドフォンをつかえば電車のなかなどでもクラシックをきくことができるが,音はやはりよくない. そうまでして騒々しい場所できくべき理由は私にはない.
私にとってはむしろ,逆にもっとまとめ買いするほうに魅力がある. 最近ふえてきた数 10 枚組で 1 枚あたり 200 ~ 600 円くらいの CD に興味があり,実際,買っている. それを家の CD プレヤーとアンプをつかってきいて,このブログにもすでにいくつか感想を書いている.
それにしても,一方では音楽を数分単位でこまぎれにして売る商売がはやり,他方では数 10 時間単位でまとめて売る商売がはやっているというのは,おもしろい. 基本的には選択肢がひろがるのはよいことだとおもう. ただし,圧縮された音ばかりをきいていると,耳がくさってしまうのではないかともおもう.