交響曲作家のおおくは 9 曲 (マジック・ナンバー !) くらいの交響曲をつくっています. それでは,一生のあいだにかいた交響曲がそれぞれもっとも個性的であり異質なものをふくんでいる作曲家はだれでしょうか? 私はそれはベートーベンだとおもいます.
もちろん,シューベルトも,マーラーも,ショスタコービッチも,そしてほかの交響曲作家たちも, 1 曲 1 曲,個性ある曲を書いてきました. しかし,そのなかには,よく似た楽想やよく似た構成があったりします. それに対して,ベートーベンは 1 曲 1 曲,オリジナリティあふれる曲をつくってきたようにおもえます.
ここですべての曲をとりあげようとはおもいません. また,それぞれの曲は本来はひとことではかたづけられない内容をもっています. しかし,あえていくつかの曲についてその特徴をひとことで書くならば,大編成でながれるような楽想の 3 番,“扉をたたくような” 5 番,副題のとおり田園的な 6 番,軽快な 8 番,などなど. マーラーの時代には交響曲に合唱をいれるのは,おどろくべきことではなくなっていましたが,それをベートーベンが 9 番で最初にやったときには,おどろくべきことだったにちがいありません.
近代・現代においては芸術においても科学・技術においても,オリジナリティがつよくもとめられてきました. しかし,おおくのばあい,それは作家や科学者個人のオリジナリティであって,作品のオリジナリティはそこまでつよくもとめられてこなかったようにおもいます. ベートーベンはそれを限界までもとめた作曲家だったといえるのではないでしょうか?
2007-11-20 追記:
金聖響,玉木正之 の本 「ペートーヴェンの交響曲」 (講談社現代新書) の冒頭にはこの項目の前半の内容とそっくりのことが書いてあるのを発見しました.
(公開した日付はこのブログ項目のほうがさきです.)