最近,確定拠出年金に関するセミナーをうけました. 保険などと同様に,金融商品に関してきちんと説明しなさいという政府方針にもとづいて,いわば強制にちかいかたちで受講させられています. このセミナーのなかでは,ある程度リスクをとる運用をしなければ目標の利率が確保できないという点とともに,リスクをへらすために株式,債券などの商品をくみあわせて (ポートフォリオを組んで) 運用するのがよいという点が強調されていました. 私自身は自分のポリシーにもとづいて単独商品で運用していて変更するつもりもないのですが,ポートフォリオをくむことでリスクがへらせるという説明にも,いささか疑問を感じています. つまり,最近さわがれているサブプライム・ローン問題は不透明なポートフォリオが原因になっているとかんがえられるからです.
確定拠出年金の運用にあたっては,自分で商品を選択します. 選択肢はあらかじめきめられているとはいえ,さまざまな商品が用意されています. 株あり,債券あり,銀行預金あり. 株や債券に関しては,さらに国内ものと外国ものとがあります. また,はじめから株と債券などが一定の比率でがくみあわされた商品もあります. しかし,これらの商品において,具体的にどの会社の株や債券がくみあわされているのかは明確にされていません.
(最近,サブプライム・ローン問題で損失をだしたことを公表した) みずほコーポレート銀行から講師をまねいての年金セミナーにおいては,これらの商品を単独で運用するのでなく,くみあわせることによってリスクをおさえることができるという点が強調されていました. しかし,ほんとうにそうでしょうか?
サブプライム・ローンが問題になっているのは,それがさまざまな商品のなかにポートフォリオの一部としてまざりこんでいて,しかもどこにまざっているのかが不透明だからです. 不透明なポートフォリオには,このようにリスクを拡散するはたらきがあります. 自分でポートフォリオを組むときには透明性がありますが,そもそも,ポートフォリオの対象商品じたいが不透明である以上,それをくみあわせることでさらに不透明性は拡散されてしまいます.
確定拠出年金のための商品はポートフォリオの対象が株式や債券ときめられているので,おそらくサブプライム・ローンのようなものがまざってはいないでしょうが,やはり,おなじような問題はおこりうるのではないかとおもわれます. ポートフォリオを組むことがいつもリスクを低下させるとは信じられません.