すべての P2P (peer to peer, ピア・ツー・ピア) がそうというわけではありませんが,だいたいにおいて,P2P の世界は 3 重にとじています. つまり,P2P の世界ではその世界に属するコンピュータによって提供されたファイルしかアクセスできませんし,それらのファイルはその世界に属するコンピュータによってしかつかわれません. P2P の世界もプロトコルごとにわかれていて,基本的にそれらのあいだで直接,ファイルが交換されることはありません. なんと,いきぐるしい世界なのでしょうか?
ただでさえ大量のトラフィックをながす P2P プログラムは,こうしたところから,ますますきらわれて,規制されることになります. これに対して P2P Web キャッシングのシステムは入力,出力のいずれもひらかれています.
P2P でファイル共有するためには非標準の特定のプロトコルをつかうので,特別のプログラムを用意しなければなりません. このプログラムがインストールされたコンピュータ間でファイルをやりとりするわけです.
したがって,第 1 にこの世界にあるファイルはこの世界のコンピュータによって提供されたものだけです. この世界のコンピュータ上で操作すれば,外部からファイルわとりこむことはもちろんできますが,基本的にはとじています.
第 2 に,この世界にあるファイルはこの世界のコンピュータでなければ,つかうことができません. この世界のコンピュータ上で操作すれば,外部にファイルをとりだすことはもちろんできますが,基本的にはとじています.
第 3 に,P2P ネットワーク間でファイルをやりとりするときも,この世界のコンピュータ上で操作をすることによってはじめて可能になります.
このように P2P ネットワークは基本的に閉鎖されているので,とくに外部のひらかれた世界からみると,「タダのり」 しているようにみえます. つまり,P2P ネットワークを構築・維持するにはかなりのトラフィックをながす必要があるので,それがかかっているコストをはらわず外部に恩恵をあたえないとすると,ただ帯域を食うモンスターだとみなされます. それゆえ,P2P トラフィックはさまざまな規制をうけることになります.
これは,外部からファイルをとりこむという点でひらかれたとしても,おなじです. たとえば,Web キャッシングをおこなう P2P ネットワークは Web というひらかれた世界から自動的にファイルをとりこみます. しかし,そのキャッシュを外部には利用させないとすれば,やはり 「タダのり」 していることになります.
これに対して,Coral のような P2P Web キャッシングのしかけは,入力,出力の両方において外部にひらかれています. すなわち,外部から Web のファイルをとりこむだけでなくて,外部にキャッシュを公開しています. そうすることで,ひらかれた世界に貢献しています.