「パノプティコン」 は 「一望監視装置」 ともいわれ,現代の監視社会のたとえとして,しばしば引用される概念である. 藤森 照信 と 増田 彰久 による 「建築探偵 東奔西走」 (朝日文庫) には,いまは正門だけが保存されている旧鹿児島刑務所の建物の写真があるが,これは外部からうつした写真でみるかぎりは,まさにパノプティコンである.
パノプティコンはイギリスの哲学者ベンサムによって 1971 年に提唱され (右図はベンサムが書いたもの),ミシェル・フーコーの 「監獄の誕生」 によって規律訓練型権力のモデルとされて,注目されるようになった. 監視施設が中央にあり,囚人の房が放射状に配置されていて,監視員は囚人を一望できるが囚人からは監視員がみえないようになっている.
鹿児島刑務所は現在はたてかえられて左の写真 (「警務作業のご案内: 鹿児島刑務所」 から借用) のようなすがたになっている. しかし,1908 年 (明治 41 年) にたてられた旧鹿児島刑務所は中世ヨーロッパの監獄をおもわせる正門をもっている. この正門 (下の写真は 「夕陽のシーマン PART 3: 旧鹿児島刑務所跡」 から借用) だけは現在も鹿児島アリーナのなかにのこされているが,刑務所本体の建物はとりこわされてしまった.
Web では写真をみつけることができないので,「建築探偵 東奔西走」 にある写真 (部分) を引用させてもらった. もっとも監獄らしい刑務所といえるのではないだろうか.