日本の建物は靴をぬいで内部にはいるというところから,西欧の建築や街並みとのおおきなちがいが生じていると著者はいう. また,日本の建築が柱でささえられるのに対して西欧の建築が壁でささえられてきたことも対比している. 靴をぬぐ習慣はいまもかわっていないが,日本の住宅もツーバイフォーのように壁でささえて厚い断熱材や二重窓などで外部から遮断するようになってきている. それをかんがえると,はたしてこのちがいが今後もうけつがれていくのかどうかは疑問におもえてくる.
著者はまた,ル・コルビュジエのような近代建築家が設計した都市は建築間の距離がとおいため徒歩には適さないことを指摘している. その例として,くるまをもたないひとがおおいインドのチャンディガールをあげている. 著者はコルビュジエが現場にいくことをあまりこのまなかったことを指摘しているが,そのために人々の生活にあわない都市空間がつくられたのだろう. それでいて 「今から数百年たった将来,もし今日の建築が存在するとしたら,おそらくコルビュジエの建築だけだろう」 とも書いているが,現場をみずに設計した建築が将来は生活にあうようになるとはかんがえられないから,なぜコルビュジエの建築がのこるのか,わからない.
いろいろ疑問の点はあるが,著者の指摘に興味はつきない.
評価: ★★★☆☆
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