世界の経済や社会や技術やその他さまざまなものが 「急激にかわっている」 ということがよくいわれる. たしかに,電気製品にしろ,くるまにしろ,商品はめまぐるしくかわっている. また,最近では石油価格や穀物価格などが急激に上昇している. こういう急激な変化はたしかにあるのだが,その一方で人間や世界はそんなに急にはかわらないということを,最近ますます感じている.
人間があたらしい習慣を身につけていく速度はそんなにはやくない. おおきな変化は 10 年単位,あるいは 100 年単位でしかおこらない. いまわれわれが着ている服は 100 年まえのひとが着ていたものとそれほどかわっていないということができるし,たべものや家に関してもそういうことができる. 服の材料や冷凍食品があること,家のたてかたなどはかわったが,それほどおおきな変化だとはおもえない.
同様に,世界では日々いろいろなイベントが発生して,変化がおこってはいるが,それらのおおくは一時的なものであり,おおきなながれは 10 年,あるいは 100 年単位でおこる.
最近おこっている石油価格や穀物価格の上昇をとってみても,その原因のひとつはここ 10 年くらいのあいだに,しだいに中国やインドの経済が発展し,石油や穀物を多量に消費するようになってきたことにある. また,ファンドの肥大化というような世界の経済構造の変化も,徐々におこってきたものである. あまり意識されていないそれらの変化が,あるとき価格の急騰というかたちで表舞台にあらわれてくるわけである.
急激に変化するものはこうした潜在的な変化が顕在化することによって発生するか,あるいはとるにたらない変化かのどちらかである. とるにたらない変化におおさわぎをした例としては,1990 年代のアメリカにおける Web 上でのさまざまなビジネスの発生があげられる. いまいきのこっているのは Google や Amazon などの少数の企業であり,ほとんどはからさわぎにおわった. こういうとるにたらない変化に右往左往することなく,長期的な変化をみさだめていく必要がある.
いまみえているそういう長期的な変化の例としては,2050 年をマイルストーンとした環境政策があげられる. 石油や穀物に関しても,目先の変化にまどわされずに,長期的な視点でみていきたいものである.