日本人のなかには遺伝子くみかえを許容しないひとがおおいようである. そのため,おおくの食品生産者は遺伝子くみかえ技術をつかっていない作物をつかうようにしている. 大口の生産者はアメリカの農家と契約して,遺伝子くみかえをつかっていない大豆,とうもろこしなどを栽培してもらっているという. しかし,農家はその栽培に消極的であり,入手困難になっているという. 遺伝子くみかえ作物が導入される理由は収量がおおいこと,栽培しやすいことである. このうちとくに収量がおおいことは食糧問題の解決,とくに価格高騰をおさえるために必要である. 日本固有の事情やカネをもっているからといって,遺伝子くみかえをつかっていない作物の栽培をつよくもとめることは,食糧問題の解決に逆行するとかんがえられる.
日本国内で生産する食糧については,日本人の趣味をつよく反映させることがゆるされるだろう. しかし,日本は食糧自給率がひくくて,海外,とくにアメリカの食糧生産に依存せざるをえない. そうであるならば,世界の食糧生産拠点であるアメリカの動向や意向には,ある程度したがわざるをえないとかんがえられる.
実際,アメリカの農家に日本人のわがままをいっても,とおらなくなってきているということはいえるだろう. たとえば,とうもろこしに関しては遺伝子くみかえでないものが入手できなくなるのではないかといわれている (写真は JanJan 「NGO,遺伝子混入を警告」 から借用した). しかし,わがままがとおるとしても,それが収量をへらし価格高騰をまねくものであるとすれば,そうするべきではないのではないだろうか.
もちろん,遺伝子くみかえ作物には潜在的な危険があることが知られている. 遺伝子くみかえのじゃがいもをたべたラットに健康障害がでたという報告もあり,安全性に注意する必要があることはたしかである. しかし,それだからといって一律に遺伝子くみかえ作物を排除するのは適当でないだろう. 安全性と生産量や価格とは,遺伝子くみかえ技術をつかわないばあいでも対立がおこり,問題が発生する. 遺伝子くみかえもそういう対立の原因のひとつをおこすが,それはひとつの原因にすぎず,めがたきにするべきではないとかんがえられる.