今後は,情報通信技術 (ICT) はこれまでのように主役であるよりも,農林水産業や鉱業の脇役としてのやくわりが増大していくでしょう. また,これらの 「リアル」 な産業に資金が傾斜する結果,ICT によるヴァーチャルな世界の重要性は相対的に低下するでしょう. サブプライム・ローン問題にみられるようなヴァーチャル世界のあやうさも,リアルへの指向をつよめるものとかんがえられます.
「脇役としての情報通信技術」 という項目に書いたように,私は今後は情報通信技術 (ICT) はこれまでのように主役であるよりも,農林水産業や鉱業の脇役としてのやくわりが増大していくとかんがえています. エネルギー価格や食糧,原材料などの価格高騰によって,これらの 「リアル」 なものに注目があつまるでしょう.
ICT はこれまで技術としても,また産業としても,主役となり,それによる WWW (World-Wide Web) などの仮想 (ヴァーチャル) 世界の構築が注目されてきました. しかし,「リアル」 な産業に資金が傾斜する結果として,今後は ICT によるヴァーチャルな世界の重要性は相対的に低下するでしょう. もはやセカンドライフ (Second Life) のような仮想世界にうつつをぬかしているひまはなくなるでしょう. ヴァーチャルという点では Web も同様ですが,これらはセカンドライフよりは 「リアル」 との関係が密であり,これまで以上のやくわりをになっていくものとかんがえられます.
また,金融市場にみられるような経済の仮想化による危険はかつてブラック・マンデーによってその兆候をみることができましたが,最近ではサブプライム・ローン問題などにおいて,より深刻になってきています. すなわち,ヴァーチャル化によって経済がみえにくくなり,リスクがたかまってきています. この意味でも,われわれはヴァーチャルからリアルにひきもどされるのではないかとおもいます.