グローバルに流通する商品の一部が汚染された材料をふくむことによって,その商品全体にリスクが拡大する事態がしばしばおこっている. そのひとつがサブプライム・ローン問題であり,べつのひとつがメラミン混入食品問題である (「メラミン混入食品問題とサブプライム・ローン危機との構造的な共通点」 参照). これらの問題はその構造に共通点があるので,ひとつの対策がひろくつかえる可能性がある.
ひとつの商品が他とまぜあわされることがなければ,商品の信頼を確保するためにはその商品が追跡できるようにすればよい. つまり,トレーサビリティが確保されればある商品が信頼できるかどうかを容易に判定することができる. 食肉や農産物などの流通に関しては,すでにこのような対策がひろく,とられている.
しかし,サブプライム・ローン問題やメラミン混入食品問題においては一種類の商品がこまかくわけて使用されるとともに,それが他の商品と混合されて増量されることによって,問題が拡大されている. このような状況のもとではトレーサビリティを確保するだけでは十分ではない. すなわち,トレーサビリティがきちんと確保されれば汚染されていない商品はそれとわかるが,汚染の範囲をおさえることはできない.
汚染範囲をおさえるための比較的容易な対策としては,混合をおさえることがあげられる. 中間産品をつくるときに原材料をすべてを混合して 1 種類のものをつくるのでなく,最低限のものを混合してつくるようにする. 均質性を確保することがこれまでよりむずかしくなるだろうが,それによるコスト増がリスク拡大から生じるコストをうわまわれば,この方法はひきあうだろう.
しかし,混合をおさえるだけでは十分な対策だとはいえないだろう. 他の対策もあわせて検討する必要があるとかんがえられる.
関連項目 (2008-10-4 追記):