最近は宗教とのかかわりは希薄になってしまった. しかし,私がこどものころは,もうすこし宗教とくに立正佼成会とのかかわりがあった. 学生のころから立正佼成会が世界平和に貢献しようとしていることは知っていたが,イスラム教世界とキリスト教世界が対立するなかで,仏教者がはたせるやくわりは,いまもあるものとおもう.
私は仏壇と神棚が拮抗する環境でそだってきた. 私の家では母と,祖父つまり母の父といっしょにくらしていた. 祖父は神道を信じていて,ちいさかったが神棚があった. 母は仏壇にそなえものをしていた.
日本では神道と仏教が矛盾することなく同居してきた. 基本的にはこれらの日本で信仰されてきた宗教は,それらのあいだだけでなく,世界の宗教のなかでも他の宗教に対して寛容なものだとおもう. わが家においても神道と仏教とが平和に共存してきたが,まったく対立がないわけでもなかった. 私はそのはざまにおかれていたこともあって,どちらにもつかなかった. つまりは完全に無信教になった.
しかし,私の家からそうはなれていない場所に立正佼成会の拠点がある. 大聖堂があり,ヘルベルト・フォン・カラヤンが演奏したこともある (がたぶん満足しなかったであろう) 普門館という建物もある. 母は立正佼成会の活動をしていたわけではないが,会費をはらっていた. 新興宗教とはいえ,仏教の一派なので,うけいれていたのだろう.
そういうわけで,私にも立正佼成会からのはたらきかけがあり,行事に参加したことも何回かある. しかし,参加してももともとベースがないので,おなじ場所にいても他の参加者とおなじ経験をしたとはいえなかった. 行事に参加して,まわりの参加者は感動しているのに自分はなにも感じていないという状況は,おどろき,あるいは鮮烈な印象をのこした.
家から一番ちかくにある総合病院は 「佼成病院」 である. つまり,立正佼成会がたてた病院である. ちかくに拠点があり,病院もあるから,立正佼成会はここ中野南部ではそれなりに知名度があるが,他の地域ではそれほど知られていないだろう. 全国的に有名な創価学会とはおおちがいである.
しかし,立正佼成会を創立した庭野日敬 (写真) は世界的にも知られている. それは,世界宗教者会議で重要なやくわりをはたしたからである. そのことは Wikipedia にも書かれている (「Nikkyo Niwano」 ― 現在はなぜか英語の項目はあるが日本語の項目はない). (写真はここから引用.)
イスラム教世界とユダヤ教・キリスト教の世界とのあいだには容易にうめられない溝があり,イスラエルとパレスチナとの対立がそれをさらに拡大させかねない危機がおこっている. そういう状況のなかで,立正佼成会にかぎらず,中立的な立場にあり,より寛容な宗教である仏教を信じるひとが,これからも宗教的あるいは疑似宗教的な対立の融和のために役割をはたしうるのではないかとおもう.