著者はすでに論文作法を新書に書いているが,田中 克彦 の本を読んで 「楽しい」 論文を書く方法をひとにつたえたいとかんがえて,前著とはまったくちがう内容を本にしている.
著者は多数の論文を査読しているのだろう. この本には査読者の立場がしばしばのぞいている. 査読者を納得させるには論文をどう書けばよいか,そういう視点で書かれた本はこれまでなかっただろう.
しかし,個々の話題に関しては疑問がある部分もある. たとえば,論文の 「はじめに」 の部分をどう書くかはその論文のはじめに要旨があるかどうかでちがうとかんがえられるが,要旨が考慮されていない. 文の構造に関しては 本多 勝一 の方法を紹介し,読点のつかいかたを議論しているが,そこでとりあげられている例題 (f) は,読点のうちかたよりまず語句の順序を再検討するべきだとかんがえられる.
しかし,そういうこまかい欠点はあっても,とくに理科系の論文を論文誌などに投稿するときには,この本は他の本には書かれていなかったいろいろなことをおしえてくれるだろう.
評価: ★★★★☆
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