著者は工学が科学ととはちがってアートにちかいものであることを強調する. コンピュータが発達するのにつれて科学的な思考 (論理) が重視され,技術屋が重視してきた視覚的・非言語的な思考 (直観) が軽視されるようになったという. 本書ではこうした技術屋がつかってきた図面・絵・模型などの例を多数あげて解説している. また,「科学」 やコンピュータにたよりすぎたために失敗した例 (橋の崩落など) を分析している.
著者は科学と工学とを対比させているが,数学や物理においても直観や全体的な把握は重要だ. 論理的な思考だけでは全体を把握するのは困難だ. しかし,技術屋のほうが視覚的・非言語的なものをより必要としてきたこともたしかだろう. コンピュータ技術が発展した現在でも,概念図的なものや非言語的なものはコンピュータにとっては苦手であり,おきざりにされやすい. しかし,コンピュータが苦手としているということは従来と同様に人手でやる必要があるということであり,この本に書かれている過去の知識が現在でもいかせるということだろう. 本書はそれをみなおすときに,やくにたつにちがいない.
評価: ★★★★☆
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