私がこどものころは,音楽を録音した媒体といえばまず LP (long-play records) だった. 1 枚 2000 円するのがふつうだった. 当時は現在よりはるかに所得がすくなかったから,そんなにたくさん買えるものではなかった. ところが,現在では CD 1 枚が 2000 円以上するものもあるとはいっても,所得をかんがえれば当時よりずっとやすい. しかも,最新の録音でなければ 1 枚 1000 円以下で買えるものもすくなくない. そうなったおおきな理由のひとつはネットで不法に音楽ファイルがタダでやりとりされているからだ. しかし,それはともかくとして,平均をこえる所得があるひとにとっては,音楽飽食の時代になってしまった.
中学・高校の時代には,こづかいのかなりの部分を LP 代としてつかっていた. マーラーの交響曲やシェーンベルク全集 (写真) などを買うためにそれをつかっていた. 月に 1 枚も買えないので,買った LP はくりかえしきいた.
それに最初の変化が生じたのは就職してからだ. とくに,会社からカーネギー・メロン大学 (CMU) にいっていたころは,日本より CD の価格がずっとやすい (廉価版は 6 ドルくらい,つまり 600 円くらい) ので,買いまくった. それでも,買った CD は 1 回はかならずきいていた.
ところが,最近では廉価版というと 1 枚 200 円くらいのものもある. 40 枚組 1 万円くらい (写真) ということになると,きかないままの CD もふえてくる. 演奏は最新ではないが,録音も演奏もわるくない. もったいないのだが,音楽をきく以外にもやりたいことはたくさんあるから,おおくの CD が放置されたままになる. 安価だからレコード会社にも演奏家にもあまりカネがまわらないが,ネットでタダできくよりはまだましである. このさき,どうなっていくのだろうか?