サン・サーンスの交響曲全曲がはいったマルティノンの CD (EMI 7243 5 85186 2 7) のなかで 3 番については 「ゆったりしたマルティノンのサン・サーンス 交響曲第 3 番 「オルガンつき」」 という項目に書いた. この CD のなかのもっとも初期の交響曲 (in A),第 1 番,第 2 番をきいた. 初期の交響曲はベートーベンの影響がつよくて,あまりおもしろみがない. それに対して 3 年後に書かれた第 1 番はベートーベンなどからの影響をかなり脱して独自の世界をきずいている. というわけで,サン・サーンスの交響曲のなかでダントツなのは第 3 番だが,そのつぎは第 1 番!
初期の交響曲は古典的な構成であり,第 3 楽章はみじかいスケルツォだ. それに対して第 1 番の第 3 楽章はながいアダージョであり,この曲のなかでももっとも魅力的な楽章だ. ほかの楽章にも楽器のつかいかたや対位法など,ちょっとしたくふうがいろいろあるようだ.
第 2 番は第 1 番よりは古典的な構成であり,対位法などのくふうはあるものの,やはりベートーベン的なわくにおさまっている感じだ.
これらの交響曲のなかでよく演奏されるのは第 3 番 「オルガンつき」 にかぎられている. 全曲きいてみて,それには理由があるということを確認した. 作曲年代をとっても他の曲が 1950 年代に書かれているのに対して第 3 番は 1886 年に書かれている. その間にサン・サーンス自身もさまざまな曲を書き,また他の作曲家のさまざまな曲にふれているのだろう. 1886 年といえばブルックナーが交響曲をつくっていた時期だ.