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メディア・アート・イベント・エンターテイメント:音楽評

たしかな構成,くふうがある厚みのある音 ― 別宮貞雄の交響曲第 1 番,第 2 番

別宮貞雄の交響曲第 1 番と第 2 番をおさめた CD,Naxos 8.557763J をきいた. 別宮はおもに 1960~80 年代に活動した作曲家だが,当時,私の目はむしろ前衛にむいていたので,それほど彼の作品には注目していなかった. いまふたたびこれらの作品をきくと,構成のたしかさと比較的単純ななかにもくふうされた厚みのあるひびきがめだっている.

Bekku-Symphony1-2.jpg 1980 年代ごろ,別宮貞雄の作品がとくにすきだったわけではなかった. しかし,彼が東京帝国大学の出身だったこともあるのだろう,私が東大の教養過程にいるとき,彼の和声法と対位法のゼミに参加した. 頭のなかで鳴っている音をうつしとることもまともにできなかったが,参加するからには宿題をこなして指導をうけようとした. 当然のことながらあまりたかい評価はうけなかったが,私が書いた楽譜を彼がピアノでひいて批評してくれたことをおぼえている.

この CD は湯浅卓雄指揮アイルランド国立交響楽団の演奏だが,これがはじめての録音だという. 第 1 番は 1961 年,第 2 番は 1977 年に作曲された (後者は 1978 年と 2004 年に改訂されている). 当時の日本の作曲・評論はむしろ前衛のほうをむいていて,私自身もそうだった. そのために録音されないままになっていたこの曲を Naxos がひろいあげたということだろう.

第 2 番のほうがより単純だというが,第 1 番も和声はそれほど複雑ではない. しかし,主要な旋律と和声の裏側で,自由にうごきまわる楽器の音が音楽に厚みを増している.

廉価盤であるにもかかわらず,日本語解説は 13 ページにわたっている. そのかわり写真は 1 枚だけになっている. 別宮のおいたちをていねいに記述し,2 つの曲をそれぞれ 2 ページほどかけて分析している. 最近は Naxos を買いあつめているが,やはりこういう未知の曲に関しては解説があるのがありがたい.

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