歴史上の国や地域の状況を想像することは,すくなくとも私にとっては現在の国や地域を想像することよりむずかしい. だから,大東亜戦争当時の中国の状況を現在のアフガニスタンの状況とくらべて理解するようにこころみてみよう.
当時の中国と現在のアフガニスタンとがどれだけ似た状況にあるといえるのか,私にはわからない. すくなくとも,いまアフガニスタンに深入りしていない日本にとっては,当時とはおおきくちがうといえるだろう.
しかし,国際的にみとめられた政府がありながら,軍閥が割拠し,内戦がおこっているという点に関しては共通しているといえるだろう. 現在のアフガニスタンにおいては,カルザイ政権が国際連合などにおいてみとめられていて,北部の軍閥なども一応それにしたがっている. 当時の中国においても,国民党政府が国際連盟によってみとめられ,張作霖などの軍閥もそれに一応はしたがっていた. 一方で,アフガニスタンにおいてはカルザイ政権にしたがわないタリバンが脅威になっている. 当時の中国においてはそれに相当する勢力のひとつが日本だったのではないだろうか.
当時の中国が国としての体裁をなしていなかったことを侵略肯定派が理由としてあげている. しかし,それは,いまのアフガニスタンにおいてカルザイ政権が掌握している地域がせまいことを理由に,勝手に侵略し占領してしまうようなものではないだろうか.
日本は当初は国際連盟に加盟していた. その点では,はじめからアメリカなどから敵視されていたタリバンとはちがう. しかし,日本は結局,ドイツと同盟をむすび,国際連盟を脱退し,米英と敵対するにいたった. タリバンも,ビン・ラディンをかくまったことから対立が決定的になったという点では,いきさつが似ていないわけではない. タリバンがアフガニスタンから排除されるべき勢力であるとするなら,当時の中国において日本軍はやはり排除されるべき勢力だったということになるのではないだろうか.
ただ,最後にひとつだけ,つけくわえておくことにしよう. 当時と現在とでは国際法がちがう. 上記の考察はその点を考慮にいれていない.