ACM (Association for Computing Machinery) ではずっとまえから電子図書館が整備されていた. 年間 100 ドル程度をはらうと,いつでも ACM のジャーナルや SIG (研究会) の文献に自由にアクセスすることができる. これはとても便利なのだが,これまで,私が所属している他のどの学会でも実現されていなかった. それがようやく情報処理学会でも実現された. あまりにおそかったが,それにしてもこれは画期的なことだ.
情報処理学会でもたいていの文献は Web にのせられている. しかし,学会のなかはジャーナルの種類や研究会ごとにこまかくわけられていて,それぞれ費用をださなければ,すべての文献にアクセスすることはできなかった. すべてがアクセスできるだけの費用を個人がはらうことは不可能にちかい.
特定の分野にしか興味のない研究者はそれでもよいだろう. しかし,私のばあいはアクセスを特定分野にしぼることはできない. そういう利用のしかたはむしろ奨励されるべきだろう.
また,大学や大企業などの組織に属している研究者のおおくは,それらの組織を通じてアクセスすれば,すべての情報にアクセスできるかもしれない. 大学のばあいはそれで問題はないのだろう. しかし,企業研究者にとっては,これでは会社の方針などによって,やはりアクセスが限定されてしまう. とくに自宅からアクセスするばあいはそうだ. 実際,わたしのばあいは ACM や IEEE に関しては会社でアクセスしやすいが,情報処理学会や電子情報通信学会はそうではなかった.
この 4 月からようやく,情報処理学会でも 1 万円程度はらえば,電子図書館に自由にアクセスできるようになった. これで,自宅にいても会社にいても,自由に文献をダウンロードすることができる. ただし,個人で登録している以上,会社で他のひとに自由に配布するわけにはいかないが…
このシステムで問題になるのは,“100 ドル” 電子図書館が実現したとたんに研究会などへの登録者がへることだろう. 私に関しても,これまで参加していたいくつかの研究会は解約した. しかし,プログラミング研究会のように登録費をおさえている研究会については,解約するのをおもいとどまった. ACM についてもおなじようにしている.
他の学会でもぜひともこういう “100 ドル” 電子図書館を実現してほしいものだ. できれば,いろいろな学会に参加している私のようなひとにとっては,複数の学会にまたがってこういうアクセス法が実現してくれるとありがたい. 各学会が独自のシステムで運用しているときはそれは困難だろうが,情報処理学会のばあいは NII (国立情報学研究所) の協力によって実現されている. 他の学会がおなじシステムに参加すれば,それも可能になるかもしれない.