4 月 13 日,文化審議会漢字小委員会は常用漢字としての 「私」 という字のよみとして 「わたくし」 のほかに 「わたし」 もみとめるという決定をしたという. たしかに慣用的に 「私」 は 「わたくし」 とも 「わたし」 ともよまれているが,この決定によって 「私」 という漢字のよみがますますあいまいになって,使用価値がひくくなったといえるのではないだろうか.
「私」 という漢字はたしかに,「わたくし」 とよまれようと,「わたし」 とよまれようと,その意味はかわらない. しかし,言語というのは音まできまってはじめてそのあいまいさが解消されたことになるとかんがえられる. これまで 「私」 が常用漢字だと仮定すれば,「わたくし」 とよめばよかった. ところが,「わたし」 ともよめるようにしたのであれば,この漢字をつかわずに,ひらがなで書いたほうがあいまいさなく文章を書くことができることになる. つまりは,この決定は 「私」 という漢字の価値をへらしたことになるのではないだろうか.
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