以前は広域ネットワークといえば Internet という感じだった. しかし最近は,全世界規模ではないにしても,広域で Ethernet がよくつかわれるようになっている. Internet が CISC にあたるとしたら,広域でつかうために拡張された Ethernet は RISC だということができるだろう.
コンピュータの世界では,かつては複雑な命令セットをもち,複雑なパイプラインによって高性能化された CPU アーキテクチャつまり CISC (Complex Instruction Set Computer) が支配的だった. その代表が Intel の CPU だ. それに対して,もっと単純なしかけで高速処理を実現したのが RISC (Reduced Instruction Set Computer) だ.
ネットワークの世界では,Internet がもともと単純なアーキテクチャをめざしながらも,いまやすっかり複雑なプロトコルになってしまった. とくに,IPv6 は IPSec までかかえこみ,マルチホーミングなどで解決困難な複雑な問題をかかえこんでしまった.
CPU のように高級言語によってアーキテクチャが隠蔽できるのとちがって,IP のばあいは隠蔽してつかうことができないので,通信者はそれを複雑でもつかわざるをえなくなっている. しかし,ネットワークを構築するときにはかならずしも IP ルータをつかわなくてもよい. 広域で Ethernet がつかえるようになったので,複雑な IP ルータのかわりにもっと単純な Ethernet スイッチをつかって,より大規模なネットワークがつくれるようになった. Ethernet そのものは 30 年くらいまえからつかわれているが,広域でつかうためには不足している部分があったため,VLAN タグの 2 重化や VLAN ID の範囲拡大などの拡張がおこなわれた. ここには RISC によって CISC がおきかえられたのと,似ている部分がある.