ハーグ条約に批准するべきかどうか,日本では賛成・反対が相なかばする状態になっている. ハーグ条約では,国際離婚したとき勝手に出身国につれかえられたこどもを配偶者のもとにもどすことをさだめている. 反対派はそれが日本の習慣や法律などにあわないことを理由に批准するべきでないとしているようだが,国際結婚をみとめる以上は国際的なルールが必要であり,すくなくとも出発点はハーグ条約しかないから,批准するべきだろう.
海外にわたって国際結婚した日本人が配偶者にことわらないままこどもを日本につれかえって,国際手配されている例があるという. ハーグ条約に批准した国のあいだでも,事情をよく考慮しないままハーグ条約を適用した結果,こどもが不幸な状態になったばあいがあるという. 反対派はそうした例をとりあげて批准に反対する.
しかし,すくなくとも国際結婚したひとは相手国のルールをうけいれたとかんがえるべきだろう. そうであるなら,相手国の事情を無視して日本にこどもをつれかえるのをゆるすべきではないだろう. 条約に批准し,その枠内で問題の解決をはかるべきだ.
国際結婚して日本でくらしていたのに,日本から勝手にこどもをつれだされたケースもある. 現状ではそういうケースでもハーグ条約にもとづいてこどもを日本にもどすことができない. そういうケースを解決するためにも,ハーグ条約の批准が必要だ.
追記:
2 月 2 日の NHK クローズアップ現代 でこの問題がとりあげられた.
賛成派,反対派の意見を平等にとりあげているので,その均衡をやぶるには意見表明が必要とかんがえて,この項目を書いた.
しかし,政府は 2010 年 8 月に約 1 年後の批准をきめていたということだ.
この問題については 2009 年にも議論があった (「「民法改正なきハーグ条約批准」をオバマに約束するな!」 など) が,そこで問題になった民法改正はまだ実現していない.
国民の慣習や意識がかわらなければ民法改正は実現されないだろう.
条約批准が先行さぜるをえないが,しだいにこの矛盾が解決されていくことを期待したい.
2011-2-5 追記:
国内法と条約とが矛盾するとき,国内法を優先して条約には批准するべきでないというかんがえもある.
法律論としてはそれがただしいだろう.
しかし,現代においてはインターネットによって,政治・経済だけでなく,社会的にもグローバル化がさけられない.
そういうなかでは,まず条約に批准するというのが適切だとかんがえられる.
関連ページ:
- よい子のハーグ条約講座
- Wikipedia: 国際的な子の奪取の民事面に関する条約