確実な安全をもとめる一般のひとびとと,放射線などに関する専門家とのあいだのギャップが,ひとびとに不安をあたえているようにみえる.
ひとびとがもとめるのはふだんどおり行動しても放射能で絶対に影響がでないという安全・安心,ホウレンソウをたべても絶対に安全・安心だという保証なのだろう. しかし,専門家は決して 「絶対に安全」 だとはいわない. それは,たとえ原発が存在しない状況でも科学的には絶対に安全ということはいえないからだ.
自然に存在する放射能も,ふえたりへったりする. しかし,ほとんど確実に安全な状態だ. しかし,そのばあいでも科学的には絶対に安全とはいえないだろう. つまり,安全でない確率は 0 ではない. 福島第 1 原発の事故がおこった現在では,安全でない確率がそれより増加していることはたしかだろう. それでもほとんど 0 であり,安心してよい水準だということができる.
しかし,0 でない以上は専門家は絶対に安全だとはいえない. それは,そう言うのが科学的な態度だからであり,責任を回避するためではない. しかし,そういう確率的な思考になれていない,あるいはそれが理解できない一般人のなかには,絶対の安全を保証してくれなければ不安におちいるひともでてくる. 専門家や政府に対する不信もでてくる.
このギャップはうめるのがむずかしい. しかし,うめないかぎりは,ホウレンソウが売れないことをはじめとして,いろいろな問題がでてくるのはさけられないだろう.