20 人以上の著者が災害復興における 「コミュニティ」 について書いている. 読んでいて疑問におもうのは,これらの著者のあいだにどれだけ 「コミュニティ」 ということばに関する共通理解があるのだろうということだ.
最近の日本の災害に関しては,町や村のなかでのひとびとのつながりについての記述がある. しかし,それも抽象的だ. もっと過去のことや海外での事例に関しては,人間が登場せずに住宅のようなモノについての記述にとどまっているばあいもある.
スマトラ地震に関してはアンケートの結果をみて 「コミュニティ」 がたよりにならなかったと書かれているが,そもそも被験者は 「コミュニティ」 ということばを理解できたのだろうかという疑問がわいてくる. ことばがわからなかったから,ひくい評価しかあたえなかっただけではないのか?
最悪なのは,災害が発生する 「事前に耐震・耐火の建物に建て替えておこうというのでは,それは単なる震災という脅しで行う再開発事業に過ぎず (脅し・説得のコミュニケーション),本稿で検討するに値しない」 (1.1.1) という記述だ. まずは価値判断ぬきで記述して,価値判断はそのあとにあるべきだろう. 全体をとおして,いまだ 「復興コミュニティ論」 にはなっていないといってよいだろう.
評価: ★★☆☆☆
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